東南アジアM&A特集:海外進出におけるM&Aのメリット、ポイント、事例、おススメの専門家を紹介 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


海外進出の選択肢の一つとしての「東南アジアM&A」

事業のさらなる発展を考える際に、M&A(企業買収)戦略を考える経営者が増加しています。
その中でも、欧米や東南アジアなど海外へ進出する手段として、現地企業を買収する「クロスボーダーM&A」が重要度を増していると言えるでしょう。

特徴はそのスピード感です。
各業界の再編や国外への事業進出など、経営戦略においてM&Aを考えている皆様に向けて、この記事では成長の著しい東南アジアへのM&Aについて、事例や注意点、課題などを詳しく紹介します。

掲載情報については2020年12月時点における情報に基づいて、ヤッパン号編集部で作成したものです。ただし、その掲載情報の真実性、合法性、安全性、適切性、有用性について弊社(ISHIN SG PTE. LTD.)は何ら保証しないことをご了承ください。直接、専門家の方々にお尋ねすることをお勧めいたします。くれぐれも慎重にご判断ください。

海外進出におけるM&Aのメリット、ポイント、事例、おススメの専門家を紹介

そもそもクロスボーダーM&Aとは?

M&Aを考える際に海外進出のための「クロスボーダーM&A」を考える方はどれほどいらっしゃるでしょうか。

クロスボーダーM&Aとは読んで字のごとく、国境を超えた企業売却・買収です。

このうち、国内企業によって海外企業の合併や買収を行う場合は「IN-OUT型M&A」、海外企業が国内企業の合併や買収を行うことを「OUT-IN型M&A」と呼びます。

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日本企業による、東南アジアM&Aの今

IN-OUT型M&Aで脚光を浴びているのは東南アジアM&Aです。
力強い経済成長が起こっているため、縮小する国内のマーケットを支えて更に事業を拡大するための有効な手段になりつつあります。また現地でも日本のブランドや距離、また親日国が多いことからマッチング率が高く、シンガポールやベトナムなどで盛んにM&Aが行われています。

日本企業による東南アジア企業の買収は増加

IN-OUT型M&Aは1980年代のバブル時代に爆発的な増加を見せました。40年が経過した今も、国内マーケットの縮小に呼応するように、国内企業による海外、特に東南アジア企業の買収は拡大基調にあります。

金融情報サービスを提供するリフィニティブによると2002年に30件程度だった日系企業による東南アジア起業のM&Aは2017年には160件を超え、15年で5倍以上増えました。そして2018年、過去最高額を達成した日本関連のM&Aはまだ強いエネルギーを持ち、ハイテク産業を中心に大手企業による買収も起こっています。
参考:M&A Online「2020年は東南アジアでのM&Aが「もっと熱く」なる?」

その中で近年実施された東南アジアM&Aには、下記のようなものが挙げられます。

・アサヒグループHDによるシンガポールの自動販売機運営「アドベンド・システムズ」買収(2020年3月)
・伊藤忠テクノソリューションズによるインドネシアのIT2社の買収(2019年9月)
・ソフトバンクグループによるシンガポールの月額ファッションレンタル「スタイルセオリー」へのラウンドB投資(2019年9月)

その他の事例に関しても、後ほどご紹介します。

M&A増加の背景は日本市場の縮小とアジア各国の成長~旺盛な内需と若い平均年齢~

クロスボーダーM&A増加の要因は非常にシンプルで、国内市場(マーケット)が縮小傾向である一方、東南アジアにおける経済成長が著しいためです。

例えばインドネシアを例に上げると、コロナウイルス流行前までは年4~6%の経済成長を維持し、リーマンショックの渦中でもプラス成長を保ちました。
東南アジア諸国で2000年から2019年まで経済成長率がマイナスにならなかったのはインドネシアだけと言われるほど、着実に堅調な発展を遂げています。

その理由は旺盛な内需にあります。輸出に頼らずとも、国内の旺盛な消費、そして産業の発展があり、現在は国内の人口増加や最低賃金上昇で発展してきました。

そのほかにも、フィリピンやミャンマーは現在、アジアの中でも発展が著しい地域と言われています。大きな要因は働き盛りの若年層が厚いことです。

フィリピンは、2013年の国連人口統計で、平均年齢は24.3歳(日本は48.9歳:2020年)、生産年齢人口(15~65歳)が他の年齢層と比べてより高い比率となる「人口ボーナス期」は2091年まで続くと予測されています。

ミャンマーの平均年齢は29.0歳(2019)と、日本の45.9歳(2019年)に比べ遥かに若く、高齢化が進む日本に対し、ミャンマーでの65歳以上の人口比率を示す高齢化率は5.7%。一方、ミャンマーの14歳以下が人口の4分の1を占めます。

日本とミャンマーは人口が倍以上違い、ミャンマーは5440万人程度ですが、このうちの14歳以下の年齢層に絞ってみれば、人口がほぼ同数であることを示しています。人口ボーナスも2053年まで続くと言われます。

一方、課題先進国と言われる日本国内市場は、失われた20年に続き大幅な産業の転換、少子高齢化、「2025年の崖」と呼ばれる旧式システムの老朽化による崩壊など、将来は目に見えてネガティブです。

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クロスボーダーM&Aに用いられる手法

こうした海外へ向けたM&A、また海外から国内へ行われるM&Aをあわせて「クロスボーダーM&A」と呼びます。このクロスボーダーM&Aの手法は大きく2通りに分かれています。

三角合弁

三角合併とは、買収先企業がある国に子会社を作り、その子会社に相手企業を買収させる手法です。自社・子会社・相手企業の3役が登場するため三角合併と呼ばれます。

合併の際、自社株を企業売却する株主に渡すことで支払いを行います。そのため買収元企業としては現金の用意が少なくて済むメリットがあります。

LBO(Leveraged Buy Out)

LBOは買収企業が売却企業の資産を吟味し、借入金でもってM&Aを行うものです。

レバレッジ(訳:テコ)とある通り、買収先企業の将来性や資産、キャッシュフローを担保として借り入れを行うことで、自己資金が少なくてもクロスボーダーM&Aが実践できるのが大きなメリットで、先述の三角合弁が大手企業中心であるのに対し、こちらは中小企業の事例も見られます。

一方で相手企業の資産価値が落ちるなど、返済が難しくなるリスクもあります。高リスクなM&Aのため、金利も高くなります。

詳細は事例は後述します。

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M&Aでの東南アジア進出のメリット

ここからは、東南アジアへの進出を「M&A」で実施するメリットを分析していきます。

短期間での海外進出が可能

まず何より、スピード感のある進出が可能であるという点です。
自社での海外展開はオンショア・オフショア問わず、入念な準備と人材獲得、教育や設備投資が必要になり、顧客開拓もゼロからスタートする必要があります。

しかしM&Aでの進出の場合、買収した地場企業の人材・設備・チャネルなどが揃った状態のため、短期間でのビジネス展開が可能です。自社展開に比べスピード感のある事業規模拡大と、経営多角化を実現してくれます。

コスト削減(人件費、原材料費、税金など)

また、買収した企業の組織を活かすことで新たな人件費が発生しづらく、製造業であれば原材料費も既存のルートをそのまま活用することもできます。

また大きなメリットの一つに税金があります。クロスボーダーM&Aの際は連結実効税率への影響をなるべく低くする必要がありますが、タイやベトナム、シンガポールなど、外資の優遇措置を設定している国も数多く存在します。こうした国々のマーケットをM&Aにより確保することで、東南アジアで売り、なるべく税負担を減らした上で国内事業を存続またはソフトランディングさせるという構図が生まれるのです。

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クロスボーダーM&Aのポイント

海外で日本企業と現地企業のマッチングが盛んに行われていることはマーケットの発展にも繋がり歓迎されることもある一方、中国資本の進出が活発になるなど、外資の流入に危機感を募らせる現地企業も多くあります。ここからは、実際に東南アジア地域にてM&Aを行う際に心がけておきたい5つのポイントを紹介します。

契約書の準拠法・所轄地

契約書を締結する際の準拠法・所轄地は、場合によっては相手企業の本拠地に準拠することがあります。

この際、日本国内の専門化でも対応が難しいことが多く、現地の法律に詳しい弁護士など、専門家に依頼する必要が出てくるでしょう。また弁護士の他にも、現地語を話すことができる人材、ビジネス慣習を知っている人材を採用することで、より現地事業を円滑にすすめる必要があります。日本の経営に関する法律と現地の法律で、規定内容が異なる場合があるためです。

何らかの問題が所轄地で発生した場合、オフショアでビジネスを展開している企業は裁判所を通じた訴訟行為などが制限される場合があります。クロスボーダーM&Aを行う際は現地法をしっかり理解できる人材を確保しましょう。

デューデリジェンス

デューデリジェンスは、投資を行う際に、投資対象となる企業や投資先の価値やリスク等を調査することです。

調査内容には投資対象国の政治経済、マーケットなど、国がどれほど安定した環境にあるかといったカントリーリスクのほか、現地法と照らし合わせて自社ビジネスが何らかの法律を侵害しないかといった訴訟リスク、日本との気候や文化、インフラの差といった環境リスクがあり、どの項目もおさえておきたいところです。

特に法律面の中でも金銭面については入念なデューデリジェンスを必要とします。国によりそもそもの会計基準が違う場合も考えられるためです。

ブレークアップフィー条項

取引保護条項の一つであるブレークアップ・フィー条項とは、特定の理由でM&Aが実行されなかった場合に、売主から買主に解約金を支払ってM&A契約を終了させる旨を定めた条項を指します。

M&Aが実行されない理由として、競合する買主への売却などが考えられます。逆に売却側から買主側へ支払う場合の違約金はリバース・ブレークアップ・フィーと呼ばれます。

この項目を事前に締結することで、万が一契約ができなくなった場合の被害を最低限に抑えることが出来ます。

もちろんブレークアップフィーの支払いが発生しないのが最良ですが、M&A実行直前に買収企業の隠されたネガティブ要素が露になった場合や、コロナウイルスのような感染症、災害時のリスクなどを軽減する意味でも、条項の締結を行うようにしましょう。違約金の金額相場は、一般的に取引額の1~5%で設定されることが多いです。

国ごとの知的財産の取り扱いの違い

知的財産権は国ごとの権利です。そのため大きな課題になることもあります。必要な国がある場合は申請を行う必要がありますが、国によって登録ができなかったり、すでに第三社が商標などをおさえている場合も考えられます。

2019年に「無印良品」が中国で行った商標侵害訴訟に敗訴したのはまだ記憶に新しい出来事なのではないでしょうか。これは冒頭商標といって、北京にある無印と無関係の企業が無印良品の商標を登録していたことが原因です。
参考記事:AFP『「無印良品」の商標訴訟、良品計画が敗訴 中国』

このように一国でブランドを築いていても、知的財産権の申請をしていない他国ではニセモノ扱いされる場合があるので注意が必要です。

事前にオリジナルの企業が商標登録を行い、きちんとその国でブランドが成立するか調査する必要があります。

専門家・仲介会社との連携

クロスボーダーM&Aの経験がある法律の専門家やアドバイザー、仲介会社も複数存在しています。現地の法律に詳しく人脈も豊富な人物や企業があれば、連携して現地での調査や手続きの一部をアドバイザーや仲介業者にアウトソーシングするなどでコストをおさえ、確実性を向上させる事ができます。

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東南アジアM&Aの事例

ここからは、近年どのようなクロスボーダーM&Aが行われているか、複数の事例を見ていきます。

株式会社ノジマ(神奈川県横浜市)

家電量販店として関東・甲信越地域では知名度の高いノジマ(https://www.nojima.co.jp/)は、シンガポール大手の家電小売事業者をM&Aで買収しています。

シンガポールを本社とし、シンガポール証券取引所に上場している、家電、IT 製品及び家具の小売事業をシンガポールとマレーシアを中心に展開するコーツ・アジア(https://www.courts.com.sg/)を2019年1月に傘下に収めました。

買収額は82億円。売却理由はシンガポールでのプレゼンス低下。一方ノジマは東南アジアへ市場への参入を行うため、資本を投入し一気に巻き返しを図りたい考えです。

この事例では、ノジマが2018年に設立した子会社を通じて同じ業界のシンガポール企業をM&Aしました。コーツ・アジアの大株主であるシンガポールリテールグループがノジマによる本公開買付に同意していたため、「発行済株式総数の全株式を対象とした金銭を対価とする任意的公開買付け」(=本公開買付)を行うことができ、最終的に株式の96%を取得。コーツを完全子会社としたのでした。

参考:AsiaX「ノジマによるシンガポール家電量販店買収の成否」https://www.asiax.biz/biz/49766/

日本たばこ産業株式会社(東京都港区)

日本たばこ産業、通称JT(https://www.jti.co.jp/)は、2017年にインドネシアのタバコ製造企業と流通企業の2社を買収しています。

買収したのは現地メーカー、カリヤディビア・マハディカ社と、流通会社のスーリヤ・ムスティカ・ヌサンタラ社。両社の取得額は1100億円に及びます。

JTはM&Aにより国外に向けたタバコ販売に力を入れており、まず1999年に米国R.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーを買収しJTインターナショナルを設置、次に先述の英国ギャラハーに対しての大型M&A、そして今回の東南アジアでのM&Aと、海外進出への手段としてM&Aを行っている面が強いと言えます。実際、国外のタバコ事業規模は金額ベースで日本国内事業の2倍以上になります。

JTは現在も新興国でのシェア獲得を強化しており、ブラジル、ドミニカ共和国、エチオピアへの出資、フィリピンでもM&Aを実施しており、同社の新興国への注目度が伺えます。

参考:日本経済新聞「JT、インドネシアの同業2社を買収 新興国でM&A加速」https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ04I3R_U7A800C1000000/

株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス(東京都千代田区)

国内の中小同業者をグループ化することで成長してきたヨシムラ・フード・ホールディングス(http://y-food-h.com/)は、決算説明資料に「当社の歩みは、中小食品企業のM&Aと当社ビジネスモデルへの共感企業からの出資の歴史」と記すほど、様々な企業を買収して成長してきた歴史を持ちます。グループ企業だけでも20を超え、決算書のM&Aに関する項目は複数ページにわたります。

参考:「株式会社ヨシムラ・フード・ホールディングス」2021年2月期 第2四半期決算説明資料https://ssl4.eir-parts.net/doc/2884/tdnet/1890516/00.pdf

そんな同社は、シンガポールの会社3社をそれぞれ20億円前後で買収。2017年にシンガポールで日本食を販売するJSTTシンガポール、2018年に食品商社のシンヒンフローズンフード、2019年に冷凍水産品加工メーカーのパシフィックソルビーをそれぞれ買収。M&Aによって日本国内の食品や日本食をシンガポールへ販売するルートを築き上げました。

同社資本金は5億2784万円。一方でJSTTは1.6億円、シンヒンは1.2億円、パシフィックソルビーは2400万円となり、同社のシンガポール向け事業は国内の持株会社の半分近い資本力まで大きくなっています。

その他にも、以下のような事例があります。

▶移動体通信事業、人材派遣などを行うクロップス(愛知県名古屋市)がシンガポールの労働ビザ申請、給与計算、税金・社会保険計算等の受託業務を行うInnovare Holdings Pte Ltdを買収。取得価格は非開示(2019年10月)

▶建機レンタル事業を行う西尾レントオール株式会社(大阪府大阪市)がシンガポール・中国・フィリピン・インドネシアに子会社を持つ大型発電機及び付帯設備のレンタル会社、ユナイテッドパワー&リソースをM&A。取得価額は46億1000万円。150億円の予算をM&A用に確保していた。(2019年5月)

▶三谷商事株式会社 100%子会社の東アジアキャピタル株式会社(東京都大田区)が、海外大手食肉加工会社より畜産用配合飼料の原料を輸入し、インドネシアや中国などアジア諸国へ輸出販売するMJIユニバーサルをM&A。取得価額は非開示。食品関連の安定した需要を見込む。

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