タイでは全ての会社に会計監査が必要!?
日本では会計監査というと、上場している会社や、大会社のみが対象となりますが、タイでは全ての会社に会計監査が必要となります。
従って日本の親会社では監査を受けた事がない会社でも、売上の一切立たない経費のみの駐在員事務所でもタイでは監査人による会計監査が必要となります。
タイの日系企業においては、会社の経営や管理を任されている日本人駐在員に経理経験のある方は稀で、多くの方にとって会計監査というもの自体が初めての体験となります。
その際に私が感じる事は日系企業が監査法人を選ぶに際しては、極端になりがちになるという事です。
具体的には、日本人駐在員の方の考え方として、そもそも会計監査自体には何ら実施必要性を感じておらず、タイの法律で決まっているので仕方なく、可能な限り安く依頼できるローカルの監査人を探すというパターンと、会計監査について良くわからないので日本親会社と同じ大手の監査法人を使うというパターンがあります。
報酬の安い監査法人に依頼すると、その後多額の罰則金がかかることも・・・
報酬が安い監査法人に依頼した場合ですと、年間3万円~10万円程度の監査費用で依頼が可能です。しかしながら、当然ほとんどノーチェックで監査報告書にサインするだけとなります。
その結果、通常の監査を実施していれば当然に教えてくれたであろう、不適正な経理処理による税務上の問題が放置されたまま長期間が経過し、ある時多額の罰則金となって返ってきます。弊事務所もタイでは税金関係の問題対応を強みとしておりますが、大きな罰則金が発生してしまった日系企業の多くがこういった監査人を使用している企業でした。
一方、大手の監査法人に依頼した場合、チェック機能が働くため、そこまで大きな税務上の問題は起こりにくいのですが、タイ経理スタッフの監査対応のための時間的な負担、また監査報酬の金額的な負担が大きくなりすぎるという問題があります。私も以前は大手監査法人にて監査業務を実施していたので分りますが、大手監査法人の場合、証券取引所や会計士協会、監査法人内の監査クオリティー審査をパスするために監査の大半の時間を監査調書作成等、監査を適切に実施した事の証拠資料の作成に割かれます。
これは、もし監査意見を誤った場合にも、監査人はできる限りの監査を実施したので重大な瑕疵はないとの主張する資料になり、監査人のリスクマネージメント上はとても大切な事ですが、依頼する企業への有用情報の見返りは非常に少ない作業となります。そしてこの作業時間は企業にチャージされ監査報酬を吊り上げます。
タイの会計監査の現状の課題
上場しており、不特定多数の株主が存在する日本親会社であればまだしも、関係会社株主だけの日系タイ法人にここまでの調書作成作業がはたして必要なのでしょうか。
監査法人選びにおいてはタイの日系企業の実情に合った、チェック機能はしっかり果たしてくれる、しかしながら監査時間の大部分を調書作成業務なく、企業の書類を見るチェックの時間に割り当てる。そんな会計監査がタイの日系企業には必要であると思いました。
本記事の執筆者
永峰三島会計事務所バンコク事務所駐在員
山崎 宏史