【海外の人材マネジメント特集】従業員は”仲間”。共に日本式カイゼンを繰り返し品質強化 | タイ進出企業インタビューならヤッパン号


【海外の人材マネジメント特集】従業員は”仲間”。共に日本式カイゼンを繰り返し品質強化

KIKUYA THAILAND.,Co.Ltd.   COO 清野 誠

【海外の人材マネジメント特集】従業員は”仲間”。共に日本式カイゼンを繰り返し品質強化

2013年にタイ・バンコクに1号店をオープンさせ、タイ人富裕層の需要拡大をうけて店舗拡大を続けている勢いのあるクリーニング店KIKUYA。日本の技術・サービス精神をどのようにローカルスタッフへ浸透させていったのか、KIKUYA THAILAND.,Co.Ltd.の清野氏に話を聞いた。

▼御社の事業内容について教えてください。

株式会社喜久屋は東京足立区にある1956年創業のクリーニング専門企業です。 首都圏を中心とした実店舗を約70店舗、その他にオンラインでクリーニングと保管を受け付ける「イークローゼット」。 また全国のクリーニング事業者と提携したオンラインサービス「リアクア」を展開中です。海外でも日本国内同様のクオリティーを提供するべく、2013年にタイ・バンコクに現地法人KIKUYA THAILAND.Co.Ltd.を設立し、サービスをスタートさせました。 タイ人富裕層にも徐々に日本品質が受け入れられて、現在拠点数は直営店7店舗、フランチャイズ店24店舗まで拡大しております。 メインは一般向けのホームクリーニングですが、昨年から工場の従業員が着用するユニフォームのレンタルクリーニングサービスを開始し、日系企業を中心に営業活動を進めているところです。

▼2013年、タイへ進出された経緯と狙いは?

日本国内のクリーニング事業は年々厳しくなっており、事業成長は2000年頃がピークでした。デフレによりクリーニングの価格が下がり、今や2000年当時の価格の60%程度まで落ちてきています。日本の優れた技術・サービスという強みがあっても、需要が落ち込んでは今後の成長は見込めません。 一方で経済成長真っ只中の東南アジアでは、所得が増え、高品質なサービスを求める富裕層が増加傾向にあります。 ランドリーのチェーン展開はまだまだ若い業種のためライバルも少ない。日本式のサービス、オペレーションを海外へ展開できるのではないかと進出を検討し始めました。最初に中国への進出を検討しましたが、なかなか難しく、一時ストップしていました。 その後、日本国内でタイ古式マッサージ店を開いたことでご縁が繋がり、タイ・バンコクに古着販売のアパレル店を開いたんです。その店舗の隣に「白屋」という日タイ合弁のクリーニング会社があったのですが、当時経営難に陥っており、先方からの申し出を受けてM&Aが実現。ひょんなご縁から、店舗・従業員を引き継ぐ形で本業のクリーニング店をタイにて開店することとなりました。

▼タイと日本はどんな点が異なるか?

ローカルの競合クリーニング店は4社ほどありますが、まだまだ日本のような管理体制が整っていないようです。汚れが落ちていなかったり、紛失があったり、問題発生時の補償がなかったり。また、仕上がりは1週間後というところが多いですね。店構えはきれいで価格も安いですが、まさに安かろう悪かろうという印象です。 当社の顧客は、日本人が多く住むエリアでは日本人率が高いですが、他のエリアでは8割がタイ人や他の外国人です。1日2便で配送し、納期は中2日と日本に近いサービスレベルを提供しています。 目まぐるしい経済成長により所得が増え、富裕層はブランド服など良いものを着ていますし、旅行へ行く人が増えコートやダウンジャケット等のメンテナンスが必要になってきています。年々クリーニング需要は高まってきており、求める質も日本とほぼ変わらないと感じますね。 ワーカー層にとっては1回の食事代と同等のクリーニングは贅沢品ですが、当社のターゲット顧客である富裕層は、複数あるコースの中でも一番良いコースを使ってくださいます。ローカルの方に支持されなければ今後の成長は見込めませんので、日本の良さを残しながらもローカライズが必要です。

▼どのように差別化をしていますか?

当社はトータルでの日本式にこだわっています。 日本の機械をただ持ち込むだけではなく、日本と同じ管理システム、生産システムを採用し日本式オペレーションを徹底しています。日本の技術力はやはり高いですし、管理においても日本は大変優れていますので、海外における信頼度も高い。そこが差別化の重要ポイントですね。 工場には常に日本人を配置し、厳重なチェック体制をひいて「カイゼン」を繰り返しています。タイ人の従業員向けにオペレーションしやすい表示方法に変更したり、店舗からのクレームをフィードバックしたり、日本のカイゼン情報をローカライズして適用したり、様々な取り組みをしています。なるべくロスなく仕上がるよう、定期的な品質改善ミーティングを行い、効率化、自動化を進めています。 品質による差別化の他、サービス領域でも差別化を図っています。ローカルではホテルのリネンをレンタルクリーニングしている会社はありますが、工場のユニフォーム系を対象としている会社はまだありません。 そこで、当社で製作するか、または当社が一括で買い上げて、ユニフォームをレンタル品として、日々回収・クリーニング・翌日工場へ配するサービスを始めました。企業は一括でユニフォームを支給する資金繰りのスリム化、ユニフォームを管理するスペースの問題などを改善できます。タイの大きな工場はほとんど日系企業ですので、需要はあると見込んでいます。 ただ、タイ人の気質、文化があり、難しい面もあります。ローカルの方はユニフォームを家まで着て帰るのが通例であり、なかなか切り替えが難しいのです。組合が強くてタイ人の組合が納得しないと企業も動けないという課題もあり、今後の営業活動方法を検討中です。

▼御社における人材マネジメント/人材育成の取り組みについて

従業員は46名、うち6名が日本人です。男性6名の他は、全てタイ人の女性です。英語はほとんど使えないので、日本人がタイ語を学びコミュニケーション円滑化に努めています。 新しく採用した際には、タイ語に訳したマニュアルを活用してもらったり、工場スタッフが直接指導したりして日本式の仕事を覚えてもらっています。 中には自分がクリーニングを利用したことがない人、ブランド品などのモノの価値を知らない人もいますので、店舗や工場にブランドのマークやロゴなどを掲示して、良いコースに回すように教えたりしています。また5Sや5W1Hを推進しています。 日々のカイゼンにおけるトレーニングはなかなか難しく、見ていないとすぐに自分のやりやすい方法に戻ってしまいがちです。それでも諦めず、言い続けるしかありません。タイ人のマネージャーを育てて、マネージャーから工場の従業員に伝えて徹底指導していく体制にしています。 当初は、店舗も工場もドライバーもとにかく皆すぐに辞めてしまっていました。給与をオープンにする文化なので、給与が良い職場が見つかったり、友達に誘われたからと言って簡単に職を変えます。 ですが、従業員の紹介で来る人が増え、定着率も上がりつつあります。求人広告を出す前に紹介してもらえる人がいないかスタッフに聞いてみるようにして、少しですが紹介フィーを出すようにしました。まだまだファミリー感がある規模だからできる、いい意味での「仲間」意識があるので、そのような雇用方法が功を奏しています。 評価制度は、長く勤務した人に勤続手当をつける程度に留めています。みな自己評価が高く、給与を見せ合う文化もあり、自分が正当に評価されていない、とこぞって主張してくるため、スキル手当を導入するのはまだ早いと思ったからです。 経営理念は「喜久屋でよかった」というシンプルなもので、毎朝全員で唱和しています。従業員みなにそう感じてもらえるようなマネジメント方法、評価方法を日々模索しています。

▼清野様のご経歴をお聞かせください

山形県出身で、実は山形に家業のクリーニング会社があります。創業から60年、私で3代目の家族経営の会社です。喜久屋の中畠社長とは20年来の付き合いで、情報交換、技術指導などしてもらっていました。 中畠社長から「タイに進出することになったから一度見に来ないか?」と誘われ、支店や工場を視察させてもらった際に、バンコクの活気、勢いに圧倒されました。自分がイメージしていたものと全然違い、何年か後にこのような場所でビジネスができたら面白いだろうなと思っていたら、半年後に電話が来て「タイの工場長が辞めるから来られないか」と突然言われました。びっくりしましたが、面白いなって思って、弟に会社を任せてこちらに来ることを決めました。日本ではクリーニングの技術を持っている人はたくさんいますが、市場飽和している日本では活かせる土壌が少なくなっています。 私は機械の修理もできるし、タイという国も気に入ったし、私なら国が違っても経験やスキルを活かすことができると思っての決断でした。

▼大変だったことはありますか

最初は言葉の問題が一番大変で、前の工場長から紙で書いてもらったりして引継ぎを受けました。また、気候が違うのも大変。当時の工場はエアコンのある部屋がなく、とにかく暑かったことを覚えています。 スタッフの中に溶け込もうと努力もしました。やはり同じ言語で話すことが一番なので、仕事が終わってから語学学校に通ってタイ語を学び、時にはスタッフに教えてもらったりしながらコミュニケーションを深めていきました。ご飯もよく一緒に食べましたね。 ドライバーが辞めて配達できない時は自分でトラックを運転して配送し、工場の機械修理も自分でやりました。苦労しながらも一生懸命取り組んでいる私の姿を見て、従業員との信頼関係は自然と深まっていったのではないかと感じます。 ドライバーや店舗スタッフがお金をもって逃げたことや、業者間の癒着でキックバックをもらっていたということもありました。でも、お店も増えて周りからの認知度が上がってくると、スタッフたちも気構えが変わってくるのでしょう。そういうことも減りましたね。 私自身が、大変なことも楽しみに変えられる性格なので、経験はネタ作りだと思っています。

▼マネジメントをされる上で大切にされていることはありますか

上の立場であっても、わらかないことはわからないと言い、教えてもらう姿勢をもちました。上下関係はしっかりしつつも、こちらから一歩降りてあげてコミュニケーションをとっていく必要がありますから。 また、メリハリをつけるのが大事だと思っています。仕事は仕事、息抜きはしっかり。締めるところは締めつつも、ある程度自由度を与えて「サバーイサバーイ感」(タイ語で快適なという意味)を残すよう意識しました。

▼勤怠管理に関して、海外だからこそ難しいと感じること

タイムカードはありますが、実際に活用しているのはLINEです。チームごとにグループを作り出勤したら時計が写る状態で写真を撮って送るようにしています。特に集計管理はしてはおりませんが、メンバーみんなが見るものですし、抑止力もあるかと思います。 当初は店舗の営業時間を守ることができないことが多かったですね。遅刻するし、自分の用事で勝手に帰ってしまうことも…。無駄な残業も多かったです。

画像:出勤時間のLINE連絡

ドライバーが配送に行ったきり、全然帰ってこないこともよくありました。残業しなくていいようにオペレーション改善しているのに、残業すればお金がもらえるからと安易に考えてしまう。配送車にGPSつけようかといろいろ考えましたが、あまりにも管理されていると思わせたくなかったので、配送先に到着したら写真を送り、遅くなる時は渋滞や位置情報を一緒に送ってもらうようにしました

画像:ドライバーからの位置情報のLINE連絡

出退勤時間と評価をリンクさせて、LINEグループでの管理を始めてからは遅刻や無駄な残業もなくなりました。ドライバーは基本給に残業代をみなしで含める給与体系にすることで、配送後は早く戻ってくるようになりました。 もっと管理する仕組みを入れればドライバーのスキルも上がるとは思いますが、ちょっとまだその段階ではないと本社の人間とも話して、現在のレベルに留めています。チームとしてどう動くべきなのか、自分の行動が他のチームメンバーにどう迷惑となるのか、具体的に言い聞かせて意識改善を図っています。

▼会社としての今後のビジョン/展開

日本品質はだいぶ完成はしていますが、まだまだ精度が甘い。工場でのチェック体制を強化し、さらに生産性も上げていきたい。今後も、精度を上げるカイゼン活動を続けて「クレームゼロ」を目指します。日本のモノをまるっきり同じように持ってきてもダメなので、こちらでアレンジを加えてローカライズしながら品質を高めていく努力をしていきます。 また日本と同じようなオンラインサービスも視野に入れています。これは日本でも実績があり仕組み自体は出来上がっていますので出来るだけ早い段階での導入を考えています。 製造業が定着して、所得が上がってくるとクリーニングのニーズは必ず出てきますので、その他の東南アジアへの進出も検討していきます。 喜久屋は大変歴史のある会社です。海外の方は歴史的価値というものを大変評価してくれます。その辺りの発信も併せて取り組んでいきたいと考えています。 私個人としては、こっちで独立してみたいですね。他国の立ち上げを独立して関わる、または、クリーニング以外の別の事業でもビジネスをしてみたいです。

日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。

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