BEPS防止措置実施条約が通常国会において承認されたため、日本においても2018年中に多数国間条約の発効が見込まれます。
【多数国条約の目的】
2018年5月18日に「税源侵食及び利益移転(BEPS)を防止するための租税条約に関連した措置を実施するための多数国間条約」(以下、「BEPS防止措置実施条約」という。) が通常国会で承認されたことから、2018年中の発効が見込まれます。
BEPS防止措置実施条約は、BEPSプロジェクトにおいて策定されたBEPS防止措置のうち租税条約に関連する措置を本条約の締約国間の既存の租税条約に導入することを目的としています。BEPS防止措置を個々の租税条約の改定によって行うことには時間等がかかることから、早期の実施のために多数国間条約に各国が参加する形式がとられています。
【適用開始時期と今後の影響】
今後、BEPS防止措置実施条約の適用対象となる租税条約を日本と結んでいる各国においても、2018年中に本条約が発効される場合、当該国との租税条約に関して2019年から本条約が適用されることが考えられます。本条約に署名している76ヵ国・地域(2018年3月22日時点)のうち、日本は本条約の適用対象となる国等として英国、ドイツ及びフランスを含む35ヵ国・地域を選択しており、今後は各国における本条約の発効状況によって本条約の規定が適用されるか否かが異なることとなります。従来から租税条約の対象となる取引を行っている場合であっても、本条約が適用されることで従来の租税条約の規定から取り扱いが変わる可能性があるため、租税条約の対象となる取引を行う際には対象国における多数国間条約の発効状況について留意が必要となります。
本記事の執筆者
辻・本郷税理士法人
松本 悟志
慶應義塾大学経済学部卒業。 大学卒業後、2014年に辻・本郷税理士法人入社。 2017年 明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科卒業。 国内企業の会計業務に従事した後、外資系企業の日本法人を中心に担当。