国外に本店を有する法人・個人が日本国内にPEを有する場合、日本で得た所得につき申告納税が必要となります。
PEについての改正動向につき、経緯と概要をお伝え致します。
1、PE
PEとはPermanent Establishment(事業を行う一定の場所)であり、日本では国内法上のPEと、租税条約上のPEとで、若干異なるPEの定義が存在していました。
2、条約署名による租税条約改正の効率化とPEの改正
以前よりPEとしての認定を逃れるための租税回避行為が国際的な問題となっていました。そのため平成27年10月に、租税条約上のPEの定義を変更する事を目的とした取組みであるBEPS行動7にて、PE認定回避の防止措置が報告書としてまとめられました。
平成29年6月に、租税条約に関するBEPS防止措置実施条約に日本も署名し、これまで各国間で個別に改正していた租税条約が、この署名により全体的・効率的に改正可能となりました。
このBEPS防止措置実施条約には、上記のPE認定回避の防止措置が盛り込まれており、BEPS行動計画7の最終報告書に基づき、OECD加盟国とモデル租税条約と歩調を合わせるため、平成30年度税制改正の大綱にこの取り決めに係るPE関連規定の見直しが明記され、国際的標準に対応する事となりました。
3、PEの主な変更概要
変更の概要については以下の通りとなります。
(1)支店PE
支店、出張所、事業所、工場倉庫業者の倉庫、その他の事業を行う一定の場所と定義されており、保管展示引き渡しのための施設や保管場所等、準備・補助的活動のための場所を除くとされていました。改正後は保管・展示・引き渡しのための場所であっても、その機能が事業遂行上、準備的・補助的な機能でないと認められる場合はPEに該当する事となりました。
現行法令上、物品の保管展示引き渡しや購入、保管のみに使われる場所に該当する場合でもPEに認定されませんが、適用後はその活動実態によりPE認定が行われる事になります。
(2) 建設PE
建設、据え付け、組み立て等建設作業等のための役務提供を、1年を超えて行う建設作業場と定義されています。契約期間を細分化してPE認定回避を図るために契約期間を分割した場合、分割された期間を合計して1年超の判定を行う事となりました。
(3)代理人PE
既存の在庫保有代理人・注文取得代理人の規定が削除されました。また、個人に販売等を委託することによるPE認定回避行為が見られたため、これまでの常習代理人の定義に、「外国法人等のために反復して契約締結又は締結のための主要な役割を果たす者(一定の者を除く)」が追加されました。
この改正は平成31年分所得税、平成31年1月1日以後に開始する事業年度分の法人税から適用されます。これにより今まで日本で納税義務がなかった個人・法人がPE認定を受け、申告納税が必要になる場合がございます。詳細は会計士・税理士等の専門家にご確認下さい。
出典
財務省HP 平成30年税制改正大綱・租税条約に関する資料
テーマに沿った一言
クラウドを活用した会計ソフトの普及が進んできており、すでに導入されているお客様もいらっしゃいます。複数人で同時に同じ帳簿に記帳し、違う場所からでも同じ会計データを共有することができます。会計データを客様とやり取りをする手間や記帳の作業時間が削減できとても便利です。
本記事の執筆者
辻・本郷税理士法人
永田 慧太郎
1987年生まれ熊本県出身。北九州市立大学国際環境工学部建築デザイン学科卒業。2016年9月より辻・本郷税理士法人へ入社。同年12月より法人国際部に所属し、主に法人業務を担当。会計・税務の支援に従事。