国外転出時課税制度は、大きく3種類(国外転出・贈与・相続)に分類されますが、今回は、相続又は遺贈により非居住者に資産が移転した場合の課税関係について、ご説明致します。
【概要】
国外転出(相続)時課税制度とは、居住者の有する有価証券等が、相続又は遺贈(限定承認に係るものを除きます)により非居住者に移転した場合に、当該有価証券等の譲渡があったものとみなして、その含み益に対して、居住者(被相続人)に所得税が課税される制度です。
【課税対象者(被相続人)】
次の(1)及び(2)に該当する居住者(国内に住所を有し、又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人)
(1)相続開始時に有している対象資産の価額の合計額が1億円以上。
(2)当該相続開始の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間が5年超。
一定の在留資格で在留している期間は、国内に住所又は居所を有していた期間には含まれません。
【対象資産】
(1)有価証券等
特定譲渡制限付株式等(譲渡制限が解除されていないもの)・ストックオプション等で国内源泉所得を生ずべきものを除きます。
(2)未決済の信用取引・発生日取引
(3)未決済のデリバティブ取引
【国外転出時課税の適用を受ける事となった場合】
相続人は、被相続人に係る所得税の準確定申告書の提出及び納税をする必要があります。
但、一定の要件を満たす場合は納税猶予(5年又は10年)の規定の適用を受けることができ、また、その対象資産を取得した非居住者である相続人等の全員が相続開始の日から5年以内に帰国した場合等には、課税の取消しをする事ができます。
【非居住者(相続人等)に対する課税】
対象資産を相続又は遺贈により取得した非居住者は、区分に応じて相続税の納税義務者に該当する場合には、相続税を納める義務があります。
区分については、財務省のページをご参照ください。
本記事の執筆者

辻・本郷税理士法人
鈴木 慶子
千葉県木更津市出身。明治大学法学部卒業。 個人の会計事務所で8年間勤務後、平成28年1月 辻・本郷税理士法人に入社。
法人国際部に配属され、現在に至る。