日本本社から従業員を海外子会社へ出向させる際に、その経費等が国外関連者に対する寄附金であると指摘されないためのポイントをご紹介致します。
法人税法基本通達9-2-47に「出向者に対する給与の較差補填」というものがございます。
出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。
(注) 出向元法人が出向者に対して支給する次の金額は、いずれも給与条件の較差を補填するために支給したものとする。
1 出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が当該出向者に対して支給する賞与の額
2 出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額
日本本社が海外子会社に従業員を出向させた場合に、出向者に対して出向前の給与水準を維持する為に日本本社が負担する部分については、損金の額に算入することとされています。
出向者としては、出向後も従来どおりの労働条件を保証するよう要求する権利があり、また出向により日本と海外との二重生活を強いられることへの補償としての留守宅手当についても、日本本社が負担することを認めているものとなります。
この場合において留意すべきこととしては、この通達は、出向元法人である日本本社が出向元として従業員を出向させながら、出向元法人において一定の対価を負担することに合理性があることを前提としており、それぞれの負担割合等については、出向契約書等により明確にしておく必要があります。その負担に合理性が乏しい場合には、国外関連者に対する寄附金であると指摘される可能性が高くなります。
出典:T&Amaster No.728 2018.2.26版
本記事の執筆者
辻・本郷税理士法人
安藤 克哉
神奈川大学理学部卒業。大学卒業後、IT企業に勤務したのち、辻・本郷税理士法人に入社。主に国内の法人顧問先を担当し、国際税務を含め幅広く税務に従事。2017年に税理士登録。