1. はじめに
BDO税理士法人は、世界第5位の会計事務所ネットワークであるBDOグループに加盟し、サービスを提供しております。BDOグループは、世界150か国以上の国・地域に展開し、全体として現在6万7千人を超えるパートナー・スタッフが、税務業務はもちろん、アウトソーシング業務(記帳代行、給与計算代行、支払代行業務等)・監査業務・アドバイザリー業務を世界各国において高水準にて提供しております。
アジア地域においては、現在シンガポール・香港・タイ・インドネシアに日本人会計士が常駐しており、日系企業による海外進出をサポートしております。各国のメンバーファームでは、会社設立から記帳代行、給与計算代行、支払代行、監査、税務、M&A、コンサルティング、清算等、幅広いサービスを日系企業に対してもワンストップ・サービスにて提供しています。
今後、GLASIAOUS.comにおいて定期的にBDOジャパンデスクのメンバーから各国における会計・税務等の最新情報をお届けしていきたいと思います。第1回目として、香港においてビジネスを行うに当たっての基本情報を提供するとともに、税務上の観点から、日系企業が海外進出をするにあたって留意すべき事項をご紹介いたします。より詳細な情報がご入用の際には、BDO税理士法人までお気軽にお問い合わせください。
2. 香港の最新版!ビジネス基本情報
監査
原則として上場及び非上場問わず全ての会社に外部監査人による会計監査を受けることが義務付けられています。一方、外国法人の香港支店、駐在員事務所は外部監査人による会計監査を受けることは要求されていません。
会計
(会計基準)
国際財務報告基準(IFRS)、国際会計基準(IAS)とほぼ同等の香港財務報告基準(HKFRS)、香港会計基準(HKAS)が適用されています。HKFRS及びHKASは、2005年1月1日よりIFRSとIASとフルコンバージェンスしたため、実質的には両者は同一の基準となっています。
(決算日と決算書の作成期限)
決算日は自由に決めることができ、また、正当な理由があれば決算日の変更も可能です。香港の会社の多くは12月決算を選択しています。決算書の法的な作成期限はありませんが、多くの日系企業は私的会社(※1)であり、その場合は決算日より9ヶ月以内に株主総会を開催する必要があるため、それにあわせて決算書の作成がなされます。
(※1)私的会社(Private company)…株主数が50名以下で株式譲渡制限等がある会社
(連結財務諸表の作成義務)
子会社等を有する場合は、香港財務報告基準、香港会社条例により原則として連結財務諸表の作成が要求されます。ただし実務上は、香港財務報告基準によって連結財務諸表の作成が要求されていたとしても、監査報告書において連結財務諸表を作成していない旨の意見がなされるのみで、それに対しての税務上や行政上の罰則は特に設けられていないため、コストの観点より作成をしていない会社も多くあります。
税制
香港の税制の特徴として、(1)低税率(2)シンプルな税制(3)二重課税の排除(4)税制の優遇措置が挙げられます。
(1)低税率
法人税率は16.5%、個人の給与所得税は、15%の標準税率方式と17%の累進課税方式の選択適用となっており、日本に比べて非常に低税率となっており、世界中から多くの投資資金を招いております。
(2)シンプルな税制
香港の税目は日本と比べて少なく、主なものは、事業所得税、給与所得税、資産所得税(日本の不動産所得に該当)、固定資産税等があります。また、住民税、消費税、贈与税、相続税に該当するものがないことも大きな特徴です。また、香港も毎年税制改正がありますが、日本のように大きな税制改正はあまり行われません。
(3)二重課税の排除
香港では、受取配当金は基本的には法人、個人ともに益金不算入となっており、二重課税の排除がなされております。また、香港外で生じた所得であるオフショア所得には原則として課税はなされません(この場合は香港税務局への申請が必要)。
(4)税制の優遇措置
①長期保有目的の有価証券の売買による利益・損失は原則として所得計算上考慮しません(キャピタルゲインは非課税)。②繰越欠損金は原則として永久的に繰越可能であります。③特定の資本的支出は即時償却(一括で税務上費用化)や5年間の償却が認められています。このように、もともと税率が低い上に各種税制の優遇措置があり納税者にとって有利なものとなっております。
3. BDO香港について
BDO Limited (BDO香港) は1981年に設立されました。約50名のパートナーと1,000人のスタッフを擁し、約130社の香港上場企業を担当しており、香港での中規模会計事務所としての現模を有しております。
サービスライン
● 監査及び保証業務サービス
● 税務サービス(香港税務・中国本土税務)
● ビジネスサービス(秘書役等のアウトソーシング)
● コーポレートファイナンスサービス(各種DD、M&A、バリュエーション等)
● 各種調査・法廷会計サービス
● 訴訟支援・婚姻訴訟サービス
● 組織再編・破産手続サービス
● リスクアドバイザリーサービス(内部監査/内部統制、コンプライアンス、IT等)
本記事の執筆者

BDO税理士法人
吉岡 秀幸
大学卒業後、2008年に東陽監査法人大阪事務所に入所。監査法人勤務約5年半の間に、銀行、製造業、小売業、学校法人等を約20社担当。その他アドバイザリー業務に従事。 2014年9月より、BDO Limitedに出向し、ジャパン・デスク担当として、主に日系企業に対しての監査サポートを中心として、香港に進出する際の会社設立、監査、会計、税務等のサポート業務を行っている。日本国公認会計士。