ヤクルトマレーシアの人材マネジメント(3/3) | マレーシア 人材マネジメント 食品メーカー進出企業インタビューならヤッパン号


ヤクルトマレーシアの人材マネジメント(3/3)

ヤクルト マレーシア 代表取締役社長 濱田 浩志

ヤクルトマレーシアの人材マネジメント(3/3)

多民族国家マレーシア。マレー系、中華系、インド系を中心に、多くの文化や宗教を背景に持つ人々が混在している。マレー系にはエモーショナルに、中華系にはロジカルに、コミュニケーションが効果的。それはマネジメントに限らず、マーケティングの領域でも同様なのだそうだ。マレーシアでもクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を展開するHUUBAPの奥畑氏が、ヤクルトマレーシア代表取締役社長の濱田氏に話を伺った。(3/3)

マレー系はエモーショナル、中華系はロジカル

―民族の壁ですが、マーケットのニーズにも存在するのでしょうか?

はい、おっしゃる通り、マーケティングにおいても、民族ごとにしっかりと考える必要があります。 ヤクルトは「いつでも、どこでも、誰にでも」親しんで頂ける飲料ですので、5年ほど前までは、マーケティングの施策も民族に分け隔てなく実施していました。 しかし、ある時、マレー系のマーケティングスタッフから「マーケティングがニュートラルすぎて誰の心にも響かない。マレー系向け、中華系向け、インド系向け、それぞれのマーケティングを突き詰めてやらないとダメ」と言われました。 当時は、中華系のシェアはそれなりに獲得できていたものの、マレーシア国民の7割を占めるマレー系のシェアはほとんど獲得できていなかったため、マレー系向けのマーケティングに大きく振りきってみました。企業としては、できるだけ顧客を取りこぼしたくないという気持ちもあったので、マレー系にターゲットを絞ることに抵抗も感じていましたが、その結果、おかげさまでマレー系と中華系、売り上げが半分半分くらいになっています。誰にでもいい、というのは、誰にも響かない、ということを実感した瞬間でした。

―具体的にはどのような施策だったのですか?

以前は、ヤクルトの効用を一生懸命に伝えていました。中華系は、ロジカルに判断する傾向が強いので、そのアプローチで中華系の人たちから支持を受けることができていました。 しかし、当時のマレー系スタッフ曰く、「ヤクルトは、ベンツ・BMWのようなイメージで、身近なイメージが全くない、いつか飲むかもしれないけど、私たちが飲むものではない」と言われていました。 つまり、マネジメントと同様にマーケティングの場面でも、マレー系にはエモーショナルにアプローチする必要があり、身近に感じてもらう必要がありました。 そこでまず、マレー系に人気のタレントやコメディアンに商品のプロモーションをしてもらったところ、徐々にマレー系の方々に受け入れてもらえるようになりました。自分たちが好きなタレントがお勧めしているということで、ヤクルトに親近感を感じてもらえたのだと思います。 そのあと、同じ狙いでマレーシアのプロサッカーチームのスポンサーになってみたところ、これは驚くほどに効果的でした。マレー系の方々への浸透度が一気に高まっただけでなく、文部省の大臣ともご縁を頂いて、マレーシアでは外資系がなかなかアプローチできない公立小中学校内売店へヤクルトを導入することもできました。サッカーはマレーシアの国民的スポーツの中でも、特にマレー系にファンが多いのですが、やはりスポーツの力は偉大ですね。マレーシアの方々にも高い関心を持っていただけたようで、今ではマレーシア代表チームのスポンサーもさせて頂いています。 こんな体験を通して、マネジメントの仕方も、マーケティングの仕方も、中華系はロジカルに、マレー系はエモーショナルにアプローチするべきだと感じています。

―話は変わりますが、マレーシア人の方々の働き方で、日本と違うと感じたことはありますか?

とにかくマレーシアは仕事を休むことが多いと感じます。特に、マレー系が多いです。中華系、インド系は、家族などの行事で計画的に休むことはありますが、マレー系は突然休んだりしますね。有給や傷病休暇も必ず使い切りますね。 もうこれは、マレーシアの文化なんだと思っています。生産性が低いと感じることもありますが、それは仕方ないと認識した上で、どう彼らに気持ちよく、モチベーション高く仕事をしてもらうかに注力するようにしています。 欠勤することに関して、責めても意味がありませんから、欠勤しないことを奨励するような施策を取り入れています。

―欠勤時の仕事のフォローなど大変ではないですか?

営業であれば、欠勤者のカバーは難しくないのですが、工場の生産ラインでは一人がいなくなるだけで回らなくなることもあります。だから、欠勤する場合は必ず、誰が代わりにその業務を対応するのか、しっかりと用意してから欠勤するように教育しています。

―そういったことも、評価の対象になるのでしょうか?

そうですね、出勤率の高さなど、評価に反映しています。あとは、成績や能力の評価なども含まれますね。 成績の評価方法は部署ごとに異なります。営業職であれば売上成績は積みあがっていくのでわかりやすいですが、管理部門や生産部門は完璧にやってあたりまえの仕事です。だから、例えば、「生産トラブルが一度も起きなかった」ということに対して、一番高い評価がつくような仕組みになっています。管理部や生産部門では、より安定的に仕事ができることを高く評価します。

―マレーシアの方は、なかなか定着しないと聞きますが、どうですか?

マレーシア人は、5年で3社変わると言われています。転職しなければキャリアアップできない環境だからです。ローカル企業の場合昇進できる仕組みになっていないことも多く転職でキャリアアップする費用があります。そこを、弊社の場合は、自社の中で職種やポジションをステップアップしながら昇進していける仕組みを用意しています。 だから、創業時から残っているメンバーもまだまだいます。そういう人は、力を発揮しながらステップアップしている人が多いですね。弊社の考え方を理解してくれて頑張ってくれる人なら、確実に3年はいてくれます。一方で、考え方に賛同できない人は、試用期間中に退職してしまう人もいます。社内で育てる、という考え方にいかに賛同いただけるかが重要ですね。

―今後の、マレーシアでどのような取り組みをしたいですか?

ちょうど今、ずっと進めているプロジェクトがあります。マレーシアに日本の給食文化や、食育を導入することです。マレーシアは、すごく肥満が多い国で、35歳以下の糖尿病予備軍が4割くらい。WHOも視察団を送るほどに悪い状況です。だから、この6~7年、少しでも改善できればと、マレーシアの教育関係者を日本の学校に連れて行ったりしています。 実はすでにマレーシアの私立2校では給食を導入しています。栄養に関する食育のレクチャーをしたり、献立作りのサポートをしてきたりしました。こういった活動を通して、子供や親の、栄養に対する関心を高め、食生活の改善で、マレーシアに貢献したいと思っています。  

記事の監修

日本でクラウド勤怠管理システム「キングオブタイム」を開発し、国内シェア トップクラスを獲得したメンバーが、その海外展開として東南アジアへ進出。徐々に人事管理が浸透してきている東南アジアでも勤怠管理システムや人事管理システムを提供し、ローカル企業のクライアントも多数。

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