成長しているアジアだからこそ不動産評価が重要
―まず簡単に、アジアでの事業内容について教えて頂けますか?
弊社は、監査法人として主に監査税務に関するサービスを提供しています。それ以外に、アウトソーシング業務として、進出の際の会社設立、経理代行、そしてM&Aのサポートなどのアドバイザリー業務を請け負っています。シンガポールでは、5番目に大きい会計事務所として上場企業などのクライアントも多いのですが、その中でもオーナー色の強い企業などのクライアントが比較的多いですね。デューデリジェンスなど、対応範囲を限定する代わりにBIG4よりは費用を抑えたい、といった要望にお答えしています。
日系企業のクライアントでは、アセアンの営業統括拠点としてシンガポールに法人を構えるメーカー販売子会社の割合が多いです。現在の日系クライアントだと、だいたい80社程でしょうか。弊社に直接ご相談頂く場合もありますが、日本の独立系会計事務所などから、海外進出の要望がある企業をご紹介頂くことも増えています。
―監査法人がアジアの不動産に関わるのはどの様なタイミングでしょうか?
不動産を保有する法人のM&Aが発生する際、銀行側などのアドバイザリーから声がかかり、不動産も含めたデューデリジェンスをさせて頂くことがあります。生産設備や工場を購入したいという目的で、それを保有する法人を買収しようとするケースもよく見られます。
不動産を保有する法人の場合は、不動産の評価も行わなければ買収金額が定められませんが、非常に専門的な分野なので、大和不動産鑑定のような不動産評価の専門家へ依頼しています。鑑定結果をもとにデューデリジェンスを進めていくのが弊社の役割です。
全資産のうち、不動産の資産が多くを占める法人のM&Aの場合、買収額が不動産の評価によって大きく変動します。単純な計算では、「資産-負債=純資産」であり、純資産に対して一定額の「のれん」を上乗せした金額が買収額になります。
また、保有している不動産が、会社資産の中で大きな割合を占める会社の監査を行う場合、大和不動産鑑定のような不動産評価の専門家へ依頼することがあります。
―アジアで不動産を保有する際の注意点は何でしょうか?
タイミングにはよりますが、全体的に経済成長を続けている東南アジアでは、不動産の時価が、ここ10年で10倍になっている不動産もあります。平均しても、だいたい5割くらいは価値が上昇しているのではないでしょうか。
このような状況で、買収対象企業が自社の売却金額を引き上げるため、不動産の時価を実際よりも大きく見せてくることもありえます。だから、買収先の出してくる数字を鵜呑みにせず、大和不動産鑑定さんのような専門家から、買い手としての鑑定書を取得し、交渉に際して有効に活用するべきです。
―シンガポールと日本で、不動産の評価について違いはありますか?
日本のニュースなどでは、IFRS(国際会計基準)を導入したから、買収時の「のれん」を減損処理をせずに済むというメリットが強調されています。ただ、実際はIFRSの方が時価評価を厳しく行っており、毎年不動産の評価が適切かどうかを検討すことが求められています。日本でもIFRSが浸透するに連れ、専門家を利用した不動産評価を実施する企業も増えていくでしょう。
東南アジアでM&Aをする場合、買収先の不動産が簿価より、高い場合もあれば、低い場合もあり、玉石混交です。予め相手側が不動産評価をしていたとしても、買収を検討する早い段階で、早目に不動産の評価を実施しておくことで、不動産取得を目的とした買収に失敗するリスクを抑える事が重要です。
大和不動産鑑定様(監修企業)からのコメント 現地会計事務所の日本窓口として活躍され、クライアントとの面談のため日本のみならず各国を飛び回っていらっしゃいます。日本企業のグローバル化に伴い、益々ご活躍の幅が広がっていくものと思います。IFRS(国際会計基準)の浸透により、弊社も不動産の評価のみならず、企業価値評価や動産評価の実績を積み重ねております。日系の監査法人等からのこういった相談はまだないですが、海外の監査法人等からは第三者機関として意見を求められることが多くなっており、業務の幅を広げるチャンスを頂いております。 |
大和不動産鑑定 とは50年以上に渡り、法人に対して、不動産に関する情報やサービスを提供してきた総合不動産コンサルティングファーム。2017年よりシンガポールに法人を構え、本格的にアジア圏でのサポートを始めている。