大湾区情報 No.32【広州市と深圳市にてマルチカレンシー決済取引試行開始】 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


中国に関するコラム

大湾区情報 No.32
【広州市と深圳市にてマルチカレンシー決済取引試行開始】

前回に引き続き、「大湾区情報」では、日系企業の皆様に有用と考えられる最新情報をいくつかピックアップしお届けします。

7 月 26 日、広東省広州市、同深圳市、福建省福州市、浙江省杭州市の 4 都市で、国内通貨と外貨を一つにまとめたマルチカレンシー口座の開設が可能となりました。 大湾区では広州市と深圳市が率先し試行開始したことは、広東省の銀行口座管理システムの改革に新たな一歩を踏み出したことを示しています。

 

マルチカレンシー口座の最大の特徴は、口座開設時にマルチカレンシー決済サービスを一括して申請できることであり、口座サービスの利便性を効果的に高め、資金運用の効率化を図ることができ、社会的コストの削減やビジネス環境の最適化において大きな意義があります。

資金の性質が同一であれば、開設する口座は 1 つだけで可能

深圳光明科学城は、99 平方キロメートルのエリアにタワーやクレーンが立ち並び、合成生物学の研究、脳分析や脳シミュレーション、マテリアルゲノムなどに関する研究施設の建設が進んでおり、国家スーパーコンピューティング深圳センター第二期が年内に着工予定、クラウドコンピューターシステム「鵬城雲脳」Ⅲがまもなく完成予定と、主要な科学技術イノベーションの担い手が集まっています。

 

今年 1 月、光明区の合成生物学研究主要科学技術インフラプロジェクトのメインビルが完成しました。現在、合成生物学研究および関連分野の専門家が 800 人以上集まり、10 の研究センターを立ち上げ、学際性を重視した世界最大の最先端イノベーションチームを構築しています。

深圳のイノベーションマップでは、大型プロジェクトがマーケットのプレイヤー自体の躍進のきっかけにもなっています。 深圳の西麗地区では、DJI(大疆科技)新本社ビル「天空之城」が上棟しました。米国のアップル本社に次ぐ、英国の建築事務所Foster + Partners による、テクノロジー企業のために設計された本社ビルの傑作となっています。

 

企業の本社ビルは、大湾区のイノベーションのランドマークとして、その産業のイノベーションの実力を示しています。 今年の深圳の主要プロジェクトの中でも、DJI 天空之城以外に、招商銀行グローバル本社ビル、ZTE(中興通訊)本社基地、Vanke(万科)本社ビル、シャオミ(小米)インターナショナル総本部、Vivo(維沃)ビル、OFILM(欧菲光)本部 R&D センター、光峰科技(Appotronics) 本部ビル、バイトダンス後海センターなど、多くの企業の本社/本部建設プロジェクトが非常に注目すべきものとなっています。「大湾区発展計画概要」には、「大湾区の発展に適合した口座管理システムの構築を検討」することが明記されています。

 

今回試行されたマルチカレンシー口座では、「通貨種類+口座番号」の形式を用いて、人民元銀行決済口座、外国為替口座、クロスボーダー人民元口座、自由貿易口座(FT)、非居住者口座(NRA)など、ほぼすべての銀行口座を網羅した銀行口座決済システムを構築しました。 このシステムにより、預金者が 1 つの銀行口座を開設することで、多通貨での資金の受領、決済、集中管理が可能となり、人民元口座と外貨口座の相乗効果による管理がさらに強化され、企業や個人による国内通貨と外貨資金の使用および管理が大幅に促進されます。

企業への利便性

中国農業銀行広東省支店の関係者によると、企業が米国、日本、ドイツと商品貿易を行っている場合、従来の口座開設ルールでは、米ドル、日本円、ユーロの3 通貨それぞれの外国為替決済口座を開設する必要があったが、このマルチカレンシー口座の試行開始後は、資金の性質が同じであれば、異なる通貨であっても一つの口座のみ開設すればよくなるとされています。

 

また、試行前には、異なる通貨の銀行口座を開設するために、複数の資料提出、複数の口座管理、さらには銀行に何度も足を運ぶ必要があったが、試行後には、国内通貨・外貨建て決済口座における手続きをワンストップで行うことができるようになります。

広州市、深圳市の銀行 144 店舗で即日手続き開始

華際国際有限公司の財務担当者によると、会社の国際収支業務やクロスボーダーの人民元決済量が多いため、従来は複数の外貨口座を開設する必要があり、またそれぞれの口座で個別に記帳や照合管理を行う必要がありましたが、「現在は 1 つの口座で複数の通貨の資金を管理することができ、その結果、企業のコスト削減と効率化をもたらしている」と述べています。

 

中国人民銀行広州支店と中国人民銀行深圳市中心支店の発表によると、即日、広州市の中国工商銀行広東省支店、中国農業銀行広東省支店、中国銀行広東省支店の計 87 支店、深圳市の中国工商銀行深圳市支店、中国銀行深圳市支店、招商銀行深圳支店などの計 57 支店にてマルチカレンシー口座が利用できるようになったとされています。

 

中国人民銀行広州支店は次のステップにおいて、新たな発展のために広東省での重点戦略としての展開に焦点を当て、銀行口座管理の改革と革新を引き続き拡大し、大湾区の発展に適合したマルチカレンシー口座決済システムを確立し、大湾区市場プレーヤーの活性化ならびに広東省の実体経済の良質な発展のため、金融面からの効果的サポートを提供していきたいと考えています。

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