香港の新5か年計画と施政報告──北部都会区開発、住宅・子育て支援、AI時代の雇用課題 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


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香港の新5か年計画と施政報告──北部都会区開発、住宅・子育て支援、AI時代の雇用課題

H.S. Planning (HK) Limitedでは、香港でのビジネスや生活に役立つ情報を毎月コラムとして提供しています。なお、当社は香港に拠点を置き、香港・中国・アジア進出を目指す日系企業様に対して、現地法人設立、会計・税務、監査取次、人事労務アドバイス、駐在者の生活相談までワンストップで支援をさせて頂いております。何かお困りごとがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

中国本土の今年の国慶節は、10月1日から7日までの7連休です。香港政府は、中国本土から香港を訪れる旅行者は約129万人にのぼると見込んでいます。政府は入境管理、公共交通、観光地の混雑対策など各方面で受け入れを強化し、MTRも9月30日から10月7日にかけて東鐵線を増便する予定です。

さて9月16日、李家超行政長官は、2026年から2030年までを対象とする「香港特別行政区経済・社会発展第一次5か年計画」を発表しました。中国本土では1953年から始まった国家経済計画である「5か年計画」ですが、香港が独自の5か年計画を策定するのは今回が初めてです。今回の計画内容では、国際金融、貿易、海運など香港が従来から持つ強みをさらに伸ばす一方、テクノロジー、AI、ロボット、マイクロエレクトロニクス、新エネルギーなど、新しい産業の育成にも力を入れる方針が示されました。これは中国本土の「第十五次5か年計画」とも連携しており、粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)との結びつきをさらに強めることも重要な柱になっています。

この計画で特に強調されているのが、香港北部の大規模開発です。北部都会区(Northern Metropolis)は、深圳に近い香港北部エリアを大規模に開発するプロジェクトです。今回の5か年計画では、この北部都会区の発展が香港の新たな成長につながるとして、開発をさらに加速させる方針が含まれています。香港政府は、新田、洪水橋、打鼓嶺の3か所に「大学城/ University Town」を作り、大学を集中させて区内を整備する計画です。大学はキャンパスだけでなく、研究施設、テクノロジー企業、産業施設、住宅などを一体的に整備し、教育・研究・産業・人材・都市生活を結びつける構想です。3つの大学城の周辺を合わせた計画面積は1,000ヘクタールを超え、新田ではAIやロボット、生命・健康科学、マイクロエレクトロニクスなどが重点分野とされる予定です。北部都会区が完成すれば、区内の雇用は約65万に達する予想されています。また、住宅不足を緩和する役割も期待されています。

香港では住宅価格や家賃の高さが長年の社会問題となっています。今回の5か年計画と同時に出された「2026年施政報告」には、公営住宅の供給を増やす方針が改めて示されています。政府は今後5年間で19万6,000戸の政府運営の住宅を供給する目標を掲げました。また、今後10年間に完成する住宅については、約40%を公営住宅(公営、所得制限ありの賃貸住宅)、30%を居屋(公営、条件を満たす人が購入できる安価な分譲住宅)、30%を民間住宅(私営、通常の住宅)に配分する方針です。さらに、2027年3月までには公営住宅の平均待ち時間を現在の4.8年から4.5年まで短縮する目標も掲げられています。「簡約公屋」という、公営住宅に入居できるまでの間、住宅に困っている人に早く住居を提供するための簡素住宅についても、2027年3月までに3万戸を完成させる予定です。

また、もう一つ今回の施政報告で市民の関心を集めたのが、出生率の低下への対応です。香港では出生率の低迷が続いており、政府は子どもを持つ家庭への経済支援を強化しています。現在実施されている新生児奨励金「ベビーボーナス」は、新生児1人につき2万香港ドルを支給する制度です。今回、この制度を3年間延長することが決まりました。さらに、2026年9月16日以降に生まれた第2子以降は3万香港ドルに増額されました。課税所得から差し引く扶養控除(子女免税額/Child Allowance)も、対象となる9月16日以降に生まれた第2子以降について14万香港ドルから16万香港ドルへ引き上げられます。

住宅政策とも連動しており、条件を満たす家庭が出産の前後に住宅を購入した場合、最大2万香港ドルの印紙税を軽減する条例措置も予定されています。そして次回の居屋制度(公営の分譲住宅制度)からは、一定の条件を満たす新生児のいる家庭について、住宅ローンの融資上限を物件価格の95%まで引き上げる方針です。住宅難と少子化が進む香港において、今回の政策は住宅支援と子育て支援を組み合わせて対応しようとしている特徴がみられます。

5か年計画と施政報告を考える上で、AIも重要なキーワードです。香港政府はAIを今後の産業発展の重要分野と考えています。北部都会区でもAIやロボットなどを重点産業として育成する方針ですが、一方でAIの普及は仕事のあり方そのものを変える可能性があります。9月22日公表の労働福利局がまとめた労働力需給の試算(中期更新版)では、AIの導入が香港の雇用にどのような影響を及ぼすかについて分析した結果、2028年の人手不足は前回推計の約18万人から約13万人に縮小される見通しです。AI活用の拡大で事務支援職などは2万5千~3万人の余剰が出ると推計され、新卒者と中高年の事務職が最も影響を受けやすいとされています。これは香港に限った話ではありませんが、これまで人間が行ってきた仕事の一部がAIに置き換わる一方、新しい仕事や必要とされる技能も生まれる可能性があります。香港政府もAIの利用を促進するだけでなく、各業界でのAI活用についてガイドラインやガバナンスの仕組みを整備し、働く人の技能開発を進める方針です。

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