なぜ日本企業のラボ型開発/オフショアは失敗するのか? | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


ベトナムに関するコラム

なぜ日本企業のラボ型開発/オフショアは失敗するのか?

*常時3000件のハイエンド求人、1,000件以上のブリッジSE、エンジニア、UIUXデザイナー、プロジェクトマネージャー等のIT系の求人を掲載する弊社freeCプラットフォームを元に分析させて頂いております。

私は、所謂IT系コンサルティングファームの出身で5年以上に亘り、日本及び海外4カ国でERPやM&Aなどのプロジェクトにメンバーとして、またプロジェクトマネージャーとして関与してきました。その後はベトナムにおいて、10年間で3社の会社を立ち上げています。

DX推進や日本のエンジニア不足から益々海外でのオフショア、ラボ型開発は増加しています。

特にベトナムは今やオフショア拠点として圧倒的なポジションを築いています。

*オフショア開発白書2021から抜粋

 

しかしながら、「最終完了までの見込みが甘く、納期が間に合わない」、「成果物の質が予想より低い」、「当初想定したよりコミュニケーションコストがかかってしまい、継続するか迷っている」、「せっかく落ち着いてきたのにエンジニアがすぐ辞めてしまって安定しない」等、様々な落とし穴や失敗事例があることは確かです。

上記の失敗をブレイクダウンしていくと、日本のオフショアやラボ型開発が失敗する原因は下記の通りです。

A) 採用の失敗:30%
B) マネージメントの失敗:70%

採用の失敗

採用の失敗と言っても色々なステージでの失敗が考えられます。
採用の失敗の中でも分解するとこうなるのではないかと考えています。

1) 採用要件が不明確・不明瞭

日系企業では日本と同様に比較的Generalな曖昧さが求められることが多く、その為、新しく採用する人の雇用要件(Job Description / Requirement)がはっきりしないことがあります。はっきりと自分の職務分担とキャリアパスを描く多くの優秀なベトナム人にとってこのポイントはマイナスであり、将来的に大きな問題に波及する場合が多いにしてあります。逆に問題が起きないということは、採用する方が優秀かどうかをチェックする必要があると感じます。

 

2) 採用フローの長期化・意思決定の遅さ・権限移譲の少なさ

マネージャーやリーダーレベルにおいて日本にいるマネージャーや日本人の代表が採用プロセスに入ることは通常ありますが、たまにジュニアのメンバーの採用に日本側の面接が入る場合があり、そうなると意思決定が遅くなり、採用が長期化します。権限移譲が進んでいない組織でベトナムで成功している企業は正直あまり見たことはありませんし、現場に権限がないとメンバーが全てお伺い体質になり、優秀な方は間違いなくこういった組織にはフィットしません。

 

3) 内部比較のみで、マーケットプライスを考慮しない給与設定

例えば少し前、GoogleをはじめとするGAFAMにおいてAIエンジニアに対して新卒でも年収2000万円を提示し、採用しているというニュースが日本でも話題になりました。もちろんGoogleにしてもこの年収というのは異常値です、そして社内にもきっちりした給与テーブルがあります。ただこの場合はマーケットの需給バランスから決定された価格で提示しないと優秀な方は採用できないということでした。ベトナムでも新卒で採用して成長させるという会社はありますが、ここぞという時には社内にないスキルを持つ人材に対しては社内ルールを変更してでも優秀な人材を取るという柔軟性は必要です。そうでなければ世界中から必要とされているベトナム人エンジニア争奪戦には勝てないでしょう。

 

4) 遅れるBenefit(福利厚生)の整備

10年、もしかすると5年前でもBenefitが弱くても多少でも給与が高ければ採用できた人材が、Benefitの充実により、採用を最終的に決定するということが増えてきました。特にIT企業ではここは顕著です。理由は様々ですが、充実したBenefitで優秀人材を惹きつけるシンガポールや中国、韓国、アメリカのスタートアップの台頭や、そもそもベトナム人の平均年齢が上がって家族や子供を持ち、その際に発生する保険や交通費、子育てのサポート費用などを欲する様になってきています。弊社の顧客でも、交通費やランチ代は当たり前として、出産祝い、保育園サポート、英語・学習サポートなど日本より充実しているのではないかという会社さんがいます。

 

5) キャリアプロセスの非提示

ここは特に優秀な方のリテンション(継続雇用・引き留め)に重要なのですが、その会社において将来的にどんなポジションや役割を提示できるのか、そこまでいくにはどの様なステップでどの様な能力を身につける必要があるのか、そしてその際はどれくらいの給与となるのか等きちんと提示する必要があります。理想的には採用時にそこまできちんと話して入社してもらうことが一番だと考えており、そこのお手伝いは弊社でもさせて頂いています。

 

6) 採用ブランディングの非注力

ベトナムではまだまだ採用ブランディングが未成熟です。日本ではWantedlyなどのツールを利用して自社の内面をうまく表現しながら共感できる採用にトライされている企業さんは特にIT系を中心に多いと思います。ベトナムではこの役割を一部の人材広告やLinkedInが担っています。弊社でも下記の様に今までの宣伝感がある人材広告ページではなく、洗練された自社の採用ページとして使って頂け、且つブランディングもできるページをご用意させて頂いておりますが、まだまだブランディングにリソースを割ける企業さんは少なく、日系企業でも残念ながら同じです。

マネージメントの失敗

採用より大きいものとしてはマネージメントがあります。
こちらも要素分解すると下記の通りとなります。

 

1) マネージメントできる人材の不足

個人として感じるのは、日本はマネージャーがいらない国、もしくは30点のマネージャーでも組織として機能する企業がほとんどだということです。

ほぼ単一民族である日本人が同質のメンバー、均一の教育を受けてきた、且つ言われなくてもよく考え働くメンバーがいる為です。

また日本は、特に就労後の継続学習が非常に低い国ですので、マネージャーとしての教育を受けてない、受ける気がない方が多くいます。

私は海外での生活が18年となりますが、日本ではメンバーとして勤務し、急にこちらでマネージャーとなり、マネージメントの失敗するケースをよく見てきました。残念ながら海外でパフォーマンスを出せる日本人マネージャーというのは5%くらいではないでしょうか。

弊社では、私以外全てベトナム人で構成されており、当然ながらマネージャーもベトナム人です。

弊社では日本で5%に入るマネージャーが見つからない、もしくはトレーニングできない場合はベトナム人マネージャーの採用をお勧めしています。絶対数は少ないですが、マネージャーとしての役割を理解し、マネージャーとして様々な企業やプロジェクトを経験しているマネージメントのスペシャリストがいることが日本との違いです。

 

2) 日本のベストプラクティスへの固執

上記にも関連しますが、日本で自社で培ったベストプラクティスをそのままベトナムでも当てはめようという方が非常に多く、驚かされるところです。

これは恐らく、日本人とベトナム人の勤勉性などの均質性を元にした判断か、Creativityが必要な仕事を工場の様に見ているのかのどちらかだと思いますが、残念ながら大間違いです。日本ではSEという仕事がエンジニア代表の様なところから始まっている嫌いがありますが、ベトナムでは一番ホットでCreativeな仕事だと認識されており、生産性を上げることが第一で、ルールや時間で縛るのはナンセンスだと考えられています。特に優秀な人材はそう考えています。

弊社でもフレックスタイム制を導入し、有給休暇も通常12日を15日にし、昼休みも時間を通常1時間のところを1.5時間にしています。これはベトナム人の働き方をベースに生産性を上げる為の施策です。一方で全ての部門においてきちんとKPIは握り、それに達しない場合は休日返上でも働いてもらいます。きちんと前もってルールとルールの合理性を握れば、きちんと責任を持って仕事を終わらせてくれます。

 

3) 成果指標の導入とそれを支える仕組みづくりの不足

エンジニア、デザイナー、テスター、プロジェクトマネージャー、そしてそれぞれのポジション(ジュニア、ミドル、シニア、リーダー、マネージャー、CTO等)においてきちんとKPIとそれらを支える評価の仕組みを持っている日本のIT企業は少ないのではないでしょうか。しかしながらそれができないのであれば、日本式のマイクロマネージメント(ベトナム人が一番嫌いなことです)を当てはめるか、Evaluation(評価)を曖昧に濁すかという選択肢に至ってしまいます。特にEvaluationやそれに紐づくPromotionというお金がかかる部分に関しては、普段あまり見せることのない肉食獣の様な強さを前面に出してくるのがベトナムの文化です。ただそれはまだマシでそれを見せずにひっそりと辞める、辞める場合もその理由を言わないということもエンジニアには特に多くあります。この成果指標やそれを評価する仕組みは非常にセンシィティブな作業になりますし、信頼できるベトナム人マネージャーが必要になります。

 

ここまで採用、マネージメントそれぞれに分けて改善点を上げてきましたが、実は良くも悪くも相乗効果があります。良い人が採用できれば、それだけマネージメントは楽になります。逆に良いマネージメントは優秀な人を惹きつけます。最近では特にGlassdoorの様な口コミサイトも増えてきましたし、エンジニア業界では特によく見られている様です。

 

弊社のラボ開発では、悪かろう安かろうのプロダクト開発ではなく、優秀なエンジニアの採用のベースを作り、且つ上述の様なきちんとした組織や仕組みを作り、長期的にハイパフォーマンスが出せるラボ開発を目指しています。是非短期的なコスト改善だけでなく、日本以外で優秀なエンジニアチームを作るというミッションがある場合は是非弊社にお声がけ頂けますと幸いです。

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