105日拡大産休法(共和国法第11210号)の施行Ⅰ〜Ⅳ | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


フィリピンに関するコラム

105日拡大産休法(共和国法第11210号)の施行Ⅰ〜Ⅳ

こんにちは、Tokyo Consulting Firm Philippine Branchの鯖戸 梨央です。

 

Ⅰ.マタニティリーブに関する最新情報

4回に渡って、フィリピンの出産休暇についてご紹介します。今回は、A:マタニティリーブの最新改正事項B:マタニティリーブの概略についてです。

 

A:マタニティリーブの最新改正事項

2019年2月20日にマタニティリーブと呼ばれる、出産休暇手当に関する法律が改正されました。

 

以前は対象期間が60日間だったものの、今回から105日間に拡大されたのです。

 

旧法では、政府機関は60日間、民間企業は60~78日間の産休を認めなければなりませんでした。

 

一方、この水準は国際労働機関(ILO)が求める98日間(14週間)には満たないこともあり、同法案ILO母性保護条約第183号が提出されていました。

 

フィリピンは同条約を批准していないため国内法の改正義務は無いですが、国内で活躍する女性が多いことも後押しし、制度改革に着手していました

フィリピン産休制度改革、100日間へ改善 | The Povertist

 

現在において、フィリピンは出生率が高く、日本と比べると約3倍になります。

 

人口動向グラフで例えるならば、1950年当時の日本人口ピラミッドと同じ形をしており、若年層の割合が最も高く、発展途上国特有の富士山型をしております。

 

2019年のフィリピン人口において、平均年齢は23歳で人口は毎年150万人ずつ増加しており、2028年には日本の人口を追い抜く見込みがあります。

 

生産年齢人口と呼ばれる14歳から64歳までのフィリピン人口につきましては、2045年まで増加する見込みがあり、人口ボーナスは継続する予想です。

 

今後も増え続けるフィリピン人口に伴い、女性の出産機会も増え続けることになります。

 

B:マタニティリーブの概略

①マタニティリーブとは何か?

②日本の産休制度との違い

③かつての出産休暇

 

①マタニティリーブとは

マタニティリーブとは出産休暇のことを言い、雇用主が妊婦労働者に対して、産前産後休暇を与えるとともに、平均賃金に基づく給与の全額を一括立替払いするものです。

 

マタニティリーブは社会保険機構(Social Security System)によって保障されており、雇用主の申請後、後日社会保険機構より支払いを受ける仕組みになっております。

 

②日本の産休制度との違い

日本の法律では産休は出産6週前、出産後8週間とされていますが、フィリピンの場合、一定の程度で、従業員の側で産休期間の開始日を選択することが可能です。

 

また、支給額も日本の場合は従来の給与の3分の2であるのに対し、フィリピンにおいては満額が支給されるという点も異なると言えます。

 

もっとも、日本の場合、産休後に育児休暇を取得することが可能ですが、フィリピンでは育児休暇は法律上の権利としては認められていません。

 

③かつての出産休暇手当

1954年6月18日に社会保険機構の発行した共和国法 第8282条※社会保障法によると、女性労働者には、対象従業員の平均日給×100%の出産手当が付与され、60日間もしくは流産の場合では78日間の手当を受けることができました。

 

※修正されて、現在は共和国法 第1161条となっています。かつては、60日間もしくは流産の場合ですと78日間の出産休暇手当が付与されておりましたが、今回の法改正によってどのような変化が見られるのか、以下の改正事項を引き続きご覧下さい。

 

以上、A:マタニティリーブの最新改正事項B:マタニティリーブの概略についてご紹介しました。

 

次は旧法と新法でどれほど、改正事項に変化が見られるのかについてご紹介します。

転載元記事はこちら

Ⅱ. 旧法と新法でどれほど、出産休暇制度に変更が見られたのか

2019年2月20日に共和国法第11210号(105日拡大産休法)が改正されたことにより、有給によるマタニティリーブ期間が60日から105日に拡大されました。

 

法律上、出産後最低60日は産休期間とすることが定められていますので、有給で産休に入ることができるのは最も早くて出産予定日の45日前からでございます。

 

また、女性が一人親の場合ですと、120日の有給休暇が付与されることになりました。その他の変更点は以下の通りです。

追加で、無給の30日間の産休を取得するためには、当初予定されていた産休期間終了日の45日前までに雇用主に対して書面にて通知されなければいけません。

 

産休法の変更点

 

以上、旧法と新法でどれほど、出産休暇制度に変更が見られたのか表にしましたので、ご参考にしてください。

Ⅲは、新法での出産休暇中に支給される手当についてご紹介します。

 

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Ⅲ. 産休期間中に支給される手当について

一口に「手当」といっても、以下の構成で成り立っております。

産休期間中に支給される手当についてです。一口に「手当」といっても、以下の構成で成り立っております。

 

(1)共和国法11210号で定められた従業員が受け取れる総額

= (2)SSSが支給する額 + (3)SSSの支給する分と従業員が受け取れる分の差額

一つ一つお話して参ります。

 

< (1) 従業員が受け取れる出産給付金>

当該法第5条(C)項では、出産休暇を利用する社員は満額(“Full pay”)を受け取らなければいけないとされています。

 

このFull payとは何を指すのか。施行規則(IRR)にて定義されている内容では、「最低賃金を下回らない(中略)、手当を含む通常の労働日および労働時間に提供されたサービスに対して雇用主が労働者に支払った実際の報酬または収入」とされております。

 

実務上は、(役職手当等の固定手当を含む)固定給ととらえて良いでしょう。

例)最新の固定給/月 × 産休取得期間3.5ヵ月

 

この“Full Pay”のうちいくらをSSSが負担するかが決まっており、”Full Pay”と比較し不足している額を会社が負担する仕組みです。

 

ちなみに、会社はこのFull pay全額を一時的に負担する形で、出産休暇申請のあった30日以内に一括で支払う必要あります。

 

次回ご紹介します、(2) SSSが支給する出産給付金-計算例を通して、SSSが支給する給付金額を正しく計算し、会社が立て替えた手当を受け取りましょう。

 

Ⅳは、SSSが支給する出産給付金とSSSの支給する分と従業員が受け取れる分の差額について計算例を用いてご紹介します。

 

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Ⅳ. SSSが支給する出産給付金とSSSの支給する出産給付金と従業員に支給される出産給付金の差額について

<SSSが支給する出産給付金-計算例>

こちらの計算式は法律の中では詳細に発表されておらず、SSS公式ウェブサイトを参考に、社内の人事ご担当者の方に計算していただく必要がございます。基本的には以下の計算式です。

これまでの保険料の1日当たりの平均額※1 × 105日(一般の出産の場合)※2

 

  • ※1 一日当たりの平均保険料(average daily salary credit)の計算方法が、(1)のFull payの数え方と違い若干複雑です。
  • 単純に直近〇ヵ月間の平均保険料から導き出すのではありません。「出産対応期間」の前の「12か月間」の中で、最も保険料が高かった「6か月間」の平均をとります。

 

出産対応期間とは、1年を四半期(1~3月、4~6月、7~9月、10~12月)で分けたときに、出産する月を含む四半期と、そのひとつ前の四半期のことを言います。

例えば、出産月が2021年11月だとすれば、出産対応期間は2021年7月から2021年12月です。

 

出産対応期間前の12か月は2020年7月から2021年の6月ですので、この中で最も保険料が高かった6か月をピックアップし、その合計を180日で割ります。

 

上記の出産対応期間、および出産対応期間前の12か月を表した図が以下の表です。

四半期データ

下記の計算例は、SSSのウェブサイトから引用しております。

【例】2020年7月から2021年6月の過去1年間で掛け金拠出の大きかった6か月の給与額が月額15,000PHPと仮定します。

 

6か月分の給与は15,000PHP×6か月=90,000PHPとなります。平均標準報酬日額が、90,000PHP÷180日=500PHPです。

 

該当する従業員の平均日給が500PHPとすると、500×105日=52,500PHP 分の手当を支給するということです。

(旧ルールでは、マタニティリーブの期間は60日間なので、SSSの負担する額は、平均標準報酬日額×60日、すなわち500PHP×60日=30,000PHP となる。)

 

  • ※2 一日当たりの保険料を、何日間分でかけるか、というのは、以下の通りです。

・(帝王切開を含む)一般の出産の場合:×105日

・ひとり親の場合:×120日

・流産の場合:×60日

 

施行規則では上記のいずれかとされております。

そのため(あまりないケースではありますが)例えば実際の休暇が105日以下だった場合でも、105日分でかけて、SSSからの保険料を計算します。

 

また、上記にてご案内したSSSウェブサイトでは、この日数が旧法に基づく60日間または78日間とされておりますが、ここは105日間で計算していただいて問題ございません。

 

< (3) SSSの支給する出産給付金と従業員に支給される出産給付金との差額>

SSS(社会保険機構)による出産給付金が、従業員の平均給与(1)に満たない場合、雇用主がその差額分を負担することが新たに規定されました。

同時に、こちらは非課税扱いであることも定められております。

 

もしも、雇用主が差額分を従業員に支払わない場合は、共和国法第11210号に違反したことになり、20,000PHP以上200,000PHP以下の罰金もしくは・及び6年以上12年以下の懲役刑が科されます。

 

従業員10人以下の小売業又はサービス業や、総資産3,000,000PHP未満の中小零細企業については免除規定がありますが、免除規定を受けるには労働雇用省(DOLE)へ毎年、免除申請を提出する必要があります。

 

よって企業が従業員に支払う差額分は、個人所得税の源泉徴収対象外となりますので、ご留意ください。

 

以上、SSSが支給する出産給付金とSSSの支給する出産給付金と従業員に支給される出産給付金の差額についてでした。

 

出産給付金において、企業側がどれほど負担する必要があるのか、見直すきっかけになれば幸いです。

 

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