はじめまして、Sanzo Infotech India Pvt. Ltd.の山田と申します。
私は2010年にインドの首都であるニューデリー市で会社を設立し、在インドの日系企業様向けにTally等のERP(業務システム)を導入する仕事に従事しています。
このたびヤッパン号Webサイトにてコラムを掲載する機会を頂戴しましたので、インドでは広く普及しているものの日本ではあまり知られていないERPソフト「Tally」について、その機能や注意点を解説していきたいと思います。他サイトにて過去に同様の趣旨にて掲載しておりました記事を一部修正したもののほか、新しい内容も追加していく予定ですので、更新をお待ちください。
インドにおける業務管理ソフトウエア(ERP)の状況
ERPとはEnterprise Resource Planningの略で、企業の主要な業務を処理するための会計、受発注、在庫管理など機能を持つ統合ソフトウエアを指します。
具体的な利用シーンをあげますと、経理に関わる仕訳を入力したり、サプライヤーへの発注書を発行したり、在庫の移動を記録するなど、皆さんも普段のお仕事で直接使用するか、間接的にお世話になっているのではないでしょうか。
インドにおいては地域特有の事情によって、他国で一般的に用いられているERPソフトはあまり利用されておらず、同国独自のERPであるTally(タリー)が最も普及しています。
現地での業務経験がない方は、このソフトの名前をご存知ないかと思いますが、それは使用地域がインドとインド人の多いインド洋に面した国のみと言ってもいいくらい限られているからです。
同様にインド進出日系企業においても、ほとんどの会社(進出直後は100%に近い)がTallyを使われています。
ただし工場を設立されている場合は、事業開始後数年でSAPやMicrosoftなどのグローバルERPへ移行されるケースが多いようです。
このような状況になっている理由は、以降の内容をご覧になられれば、お分かりになるかと思います。
Tally (タリー)とは
TallyとはTally Solutions Pvt. Ltd.によって開発・販売されているERPソフトウエアで、インドにおける業務ソフトウエアのデファクトスタンダードとなっています。正確には現在提供されているのはTally.ERP 9という商品名のソフトです。(2019年11月現在)
このソフトが普及している理由は、主に以下の点が挙げられます。
・コストパフォーマンスが高い、つまり金額の割には機能が揃っていること。
・インドの税制に対応していて申告の際に便利であること。
・多くの会計教育がTallyで行われているため、会計担当を雇ったときに同じものを使おうとすること。
特に2点目の税制については、インドでは2017年7月にGST (Goods and Services Tax)が導入され間接税を統合したものの、取引の税制上の扱いや州の違いを考慮した帳票作成や申告を行っていかなければならないため、結局のところ外国製のERPソフトをそのまま使用することはできません。
このことは日本のERPソフトはもちろんのこと、その他外国のソフトウエア会社からすれば高い参入障壁になっています。したがって、グローバルERPで導入検討の俎上に挙がるのは、比較的ローカライズに力を入れているMicrosoftかSAPくらいになってしまいます。
さて、そのTallyの機能について、以下簡単に一覧にしてみます。
<機能一覧およびイメージ>
会計:仕訳、入金、支払、および買掛、売掛、残高試算表、B/S、P/L等のレポート
販売:受注、販売インボイス、および受注、受注残、販売等のレポート
購買:発注、購買インボイス、および発注、発注残、購買等のレポート
在庫:入荷、出荷、生産実績、および在庫一覧、年令表等のレポート
上記のように、Tallyには標準で受発注や在庫管理の機能もあるのですが、実際にはこれを会計ソフトとして用い、他の業務はExcelで処理しているケースが多く見られます。理由としては単純に管理者層に機能が知られていないこと、会計部門は自分の担当範囲のみにTallyを使い、他部門の業務には関与しないのが普通になっていること、があります。
その結果、社内におけるデータや業務の重複が出てきますし、Excelでの入力はミスも発生しがちで、業容の拡大についていくのが難しくなっていきます。
そこで、弊社で承っているお仕事が、この「Tallyの会計部分しか使っていない状態から、受発注や在庫管理等の主要業務全体へ利用範囲を拡大させる」ことです。
インド拠点を運営していくうえで、このとおり有り物のソフトをうまく使っていけばよいのですが、Tallyにも以下のように注意点や不得意分野がいくつかあります。
・日本のERPソフトとの違い
・工場の生産管理における力不足感
・管理者層の求める分析資料が出てこない
次回はこれらの点を具体的に掘り下げていきます。