ベトナムの人事制度設計における現場で、とにかく日系企業様がよく仰られることとして、「シンプルな制度にしたい」というご要望があります。今回はこの「シンプル」とはどういうことなのか、複数の制度設計現場での経験を通じて、考えをまとめてみたいと思います。
見た目がシンプル
シンプルな制度設計と言うと、企業様がイメージされるのはまず「見た目」です。特に、ベトナム人社員の目に触れる評価シートなどの見た目が簡素であることや、手当の種類が少なくペイロールの見た目がシンプルであることなどは、ご要望としてよくお伺いします。但し、単純に簡素にするだけでは、むしろ判断基準が主観に頼らざるを得なくなります。手当をひとまとめにした場合も、何のための手当なのかベトナム人社員に説明ができず、差額の根拠も説明できなかったり…という状況に陥ることがよくあります。
判断基準がシンプル
よく見過ごされがちなシンプルさとしては、見た目がシンプルなのと相反しやすい点として、「判断基準がシンプル」という点もあげられます。行動評価を主として、各項目を5段階で評価する制度はよく見受けられます。さらにこの5段階評価が、上司の主観に頼っていることはとても多いです。これは一見簡単なようにみえて、採点者は判断基準が判然とせず採点に悩むことになります。さらに、最終結果を手にしたベトナム人の部下は、その採点根拠が判然とせず「結局何が悪くてこういう結果になったんだろう」と悩みを抱えてしまいます。
このように誤ったシンプルさは、実は評価シートを作る側の設計者にとってだけシンプル(評価基準の見た目と評価シートの体裁がシンプル)なのであり、主役である評価する側とされる側にとっては、難題を残すことになります。
そこで重要なのは、判断基準が明確で分かりやすい評価項目の設定です。定量評価項目や、目標設定による評価はこの点で優れています。もしくは、定性的な評価項目には全項目に汎用的な表現で基準展開するのではなく、具体的な行動レベルでの評価基準展開をしてあげることなどが有効です。
理解するのがシンプル
ベトナム人社員が簡単に理解できる(=分かりやすい)、納得感を感じやすい(=理解するにあたり、違和感を感じない)制度にすることができれば、それはシンプルと言えるでしょう。
新制度を説明してみて、ベトナム人社員の反応が「まあ、それはそうだよね」となることが1つのゴールイメージです。その意味では、目標設定による業績評価の手法は、目標設定に割く工数負担は重たいものの、時間をかける価値があります。評価される側の社員にとっては、何をしたら自身が評価されるのか理解しやすく、納得感が強まることが多いからです。
運用がシンプル
制度を運用していく上でのルールがシンプルであること、細かいルールがなくても運営できることは、実際に制度を運営するベトナム法人の人事部側にとって重要です。なるべく少ないルールで回せる制度を意識して設計しましょう。また、一連の制度概要が1箇所にまとまってルールが可視化されていることも欠かせません。日本法人とベトナム法人で、または現場の日本人とベトナム人で見ているものが違うというのは避けるべきです。
シンプルこそ、難しい!
以上、ベトナム進出する日系企業様からご要望の多い、「シンプル」な制度について徒然なるままにまとめました。とはいえ、言うは易し行うは難しです。そぎ落として良いところを特定できるという事は、そぎ落としてはいけないところ(=本質的に重要なところ)が何か分かる…という事でもあり、「シンプル」を極めることこそ、その道を究めることに通じると考えられます。
なお、弊社ではベトナムの人事制度構築に関するサービスを提供しています。ベトナム進出後、現地に導入する人事制度に関してアドバイス等をお求めの場合は、一度ご相談ください。
※本記事はiconicJobの投稿をもとに作成しています。
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