【ドイツ】新型コロナウイルス感染リスクに対するドイツ政府の対応とドイツ進出日系企業への影響 | 日本企業の海外進出支援サイト ヤッパン号


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【ドイツ】新型コロナウイルス感染リスクに対するドイツ政府の対応とドイツ進出日系企業への影響

新型コロナウイルス感染リスクに対するドイツ政府の対応とドイツ進出日系企業への影響

新型コロナウイルスがドイツの生活に直接影響を及ぼすようになったのは3月頃からであった。イタリアの感染者数の爆発と死者の急増を経て、3月8日にはドイツ政府のサッカーゲームの観戦禁止令など多人数の集合を抑制する措置などでコンサートや劇のチケットがキャンセルになった。ドイツは16州で成り立っている連邦共和国であるため各州の感染症対策はタイミングと範囲で異なる。

毎日、感染者の数の変化があるためこの場ではドイツのゲッティンゲン市のMax Planck研究所の新型コロナウイルス拡散防止対策の効果を分析した結果とトレンドの図を紹介したい。

灰色の線は何ら対策を取らなかった場合の感染者の推移予想、赤の線は上記の3月8日の対策の効果の予想、黄色は全国学校の休校、殆どの小売店の閉鎖、レストランの閉店と緑色の線は接触禁止令により外出を極力制限し、1.5メートルの距離を保つルールなどを警察が取り締まるように厳格化したことによる感染者数の増加が鈍化する効果が予想されている。

 

 

3月の接触禁止により新規感染者の数は減少し始めて4 月 15 日の記者会見でメルケル首相は今後の規制緩和計画を発表した。記者会見で発表されていた主な内容は次の通りである。

  • ・接触禁止令(不要不急の店の閉鎖、学校・保育園の閉鎖、1.5m 以上の距離を取る、3 人以上の集まりの禁止など)は5 月 3 日まで延長
  • ・800 ㎡以下の店舗面積の小売店の営業開始は、厳格な衛生策遵守の条件で 4 月 20 日 から可能。自動車・自転車販売店、書店は面積に関わらず営業開始可能
  • ・美容院は厳格な衛生策遵守の下で 5 月 4 日から営業可能
  • ・学校は 5 月 4 日以降に再開(各種衛生策の順守下で、卒業を前にした最高学年か ら段階的に。今後州が構想を作成)
  • ・マスク着用は義務化はしないが、特に近郊公共交通機関内と買い物時は着用を強く推奨
  • ・感染者との接触を追跡するアプリの使用
  • ・大規模イベントは 8 月 31 日まで中止
  • ・飲食店の開店時はまだ未定
  • ・現時点でドイツの医療制度の崩壊は回避できている模様

 

個人的には経済活動の急ブレーキは効果を示して徐々に緩和を進める方向が期待できると思う。毎週の連邦政府と州首相の会合による新型コロナウイルス政策は興味深くフォローしている。在ドイツ日本国大使館のホームページでドイツの情報は適時開示されているので日本語の情報元として推奨する。
https://www.de.emb-japan.go.jp/itpr_ja/konsular_coronavirus200313-1.html

他方、隣国フランス、チェコ、ポーランド、スイスやオーストリアへの国境が実質的に閉鎖されていること、イタリアやスペインへの出張が困難な中、ドイツ進出日系企業の営業活動は限定されている状況が続く。

ドイツの自動車メーカーは世界の新車購買需要が暴落したため生産を一時的にストップし、自動車関連経済活動も完全に停止している。自動車部品、自動車関連化学製品、電子部品などの日系企業では売上が下がって業績の悪化、資金繰りの問題に直面する状況に至っている。日本食における食材の輸入と販売に関わる企業はレストランが閉店しているため、四月は大幅な売り上げの減少が予想されている。デュッセルドルフの日本レストランは持ち帰りでの販売を行っているが、弊社を始め日本人コミュニティーでお弁当を注文する程度でサポートしているがコストをカバーするほどの売上に貢献できるレベルには至っていない。

会社にとっては人件費と家賃が大きなコスト要因である。家賃に関してはコロナウイルスの影響で資金がショートしていることが立証できる場合は630日までの家賃の支払延期を最長で2022年6月30日まで家主に求められる法律が導入された。
AdidasやH&Mのアパレル大手がこの規定を活用して店舗の家賃の支払いの延期を実施したことドイツでの世論では相当な反発を生んだが、小売店のような零細企業にとっては会社の破産を回避できるありがたい措置である。

現時点で、弊社の200社近いクライアントではまだ家賃の支払延期を求めたケースはない。

時短助成金制度

日系企業のクライアントが実際に適用している対策は時短操業による人件費削減である。

例えばレストランのウエーターは店を閉めると仕事が無くなり、工場や倉庫の作業員の仕事も操業短縮で不要となる。就労キャパを解雇で調整するのではなく、時短勤務制度を適用することで継続雇用をなるべく維持することが経営者の選択肢である。

全従業員の10%に時短勤務が適用され、短縮された分の給与を支払う義務がない会社が10以上の減給を行うと連邦労働庁が減給の一部を補償する制度がある新型コロナウイルスの影響で会社の業績が悪化し、従業員の継続雇用が困難であることを証明でき、現況が一時的である場合は連邦労働局が時短勤務の従業員の所定労働時間の月給の手取りと時短勤務の減給後の手取りの差額の60%、子持ちの場合は67%を会社に支給する。パンデミックとは関係なく会社がリストラしなければならない事態であれば時短助成金が却下される可能性があるので会社の申請が適格であるかは専門家の確認が重要。

支給額の算定には所定労働時間の月給6.900ユーロを上限としている。残念ながら会社は給与を払い、後で申請して時短援助金を受領する仕組みであるため売上が暴落して資金難に陥った会社にとっては流動性の確保の緩和にはつながらない。日独社会保険協定でドイツの失業保険制度加入が免除されている日本人駐在員には時短援助金は支給されない。

時短助成金を受領するためには時短制度適用前に連邦労働庁にその旨通知しなければならない。従業員とは別途、時短制度適用の合意書に署名してもらう必要がある。従業員代表機関の経営協議会が存在する場合はそこの承諾を得る必要もある。これらの従業員との協議及び合意書交付、申請手続きは弊社の弁護士と税理士が代行する。

従業員が時短制度に応じた場合、まずは過年度の未消化有給休暇と残業日数の消化を行い、その後に時短助成金制度が適用になる。

雇用主が所定労働時間の手取給与額の80%までに支給額を任意に追加で払う場合は賃金税の源泉徴収対象となるが社会保険料は免除となる。更に80%を超える補助を払う場合はその額は賃金税と社会保険料が課せられる。

時短助成金は欧州他国でも支給されているが、英国、フランス、オーストリアやイタリアでは補償額のレベルが80%から90%である。ドイツ連邦労働大臣は現行の60%を80%に引き上げる法案を策定しているそうで近い内に補償額が上がると期待されている。

税務上の援助策

税務当局は企業の流動性の問題の緩和のためにいくつかの税金の納付に関する緩和策を適用している。これらの措置は2020年末まで有効である。

1) 税務申告後の追徴納税期限の緩和

年度申告を行った後、管轄税務署が税額の査定を行い、追徴税が発生する場合がある。滞納の場合は、罰金等の対象となるが納税者には、納付期限の延長を申請することは可能であるが税務署の裁量で却下されて強制執行となることもあり得る。

現況では税務署は新型コロナウイルスの影響で支払延期の依頼には原則的に応じる姿勢で納税者(個人も企業も同じ扱い)の資金状態緩和に貢献する政策である。

2) 予納の支払猶予

通常、過年度の最終税額をベースに四半期毎に法人税と事業税の予納(前払い)を行うが、上記と同様に新型コロナウイルスの影響を理由に減収、赤字の見込みを理由の予納額引下げには応じる。

VATの予納申告期限を一ヶ月延長する仕組みが存在するが、担保金を預ける前提条件がある。この担保金の納付は免除となった。

毎月の給与の賃金税に関しては、納付延期は実施されなかったが、滞納に対しての罰則規定が免除となるため実質的に延期と同様な効果がある。毎月、賃金税と同様に天引きされる社会保険料に関しては支払延期の申請が可能であるが新型コロナウイルスの影響で流動性の問題が支払不能の状態に起因していることを立証しなければならないことと、時短勤務、州の補助金申請、納税の延期などの措置を適用し、最終の手段として社会保険料納付の申請が可能である。

3) 滞納課金や支払遅延利息の免除

税務署は 2020 年末までは、滞納課金や支払遅延利息を免除したりすることができる。強制執行なども延期する形で対応するとのこと。

税理士は上記の監査措置がクライアントで適用可能かをチェックし、申請のサポートを提案するため通常、企業は自ら適用範囲を満たしているかを確認する必要はない。

各州で小規模企業、個人事業主の救済措置として援助金が導入されている。例えばデュッセルドルフ市が所属しているNRW州は9000ユーロから15000ユーロを迅速に申請後に支給している。これらの援助策の対象企業は個人が株主であるケースに限定されているため通常、グループ会社の100%子会社の日系企業は支給資格がない。

ドイツ復興金融公庫( KfW)は連帯保証人として企業の運転資金融資の貸倒リスクを保証し、低金利の融資を可能としている。融資申請は民間銀行で行う。KfWに直接確認を取りましたら外資系企業の除外はないため申請条件を満たせば日系企業(支店も含む)流動性のサポートは得られるとのこと。

上記はドイツ進出日系企業で適用できる主な政府の援助策を紹介している。毎週のように新型コロナウイルスの影響に対して政府は対策を更新し、経済活動の復帰も計画しているため最新情報の確認が重要だ。

最後に

5月からマスク着用義務で小売店は開店でき、スポーツジムも限定的に開き、テニスなど屋外スポーツもできるようになりました。ドイツサッカーのBundesligaの無観客試合の開催は世界的に注目を浴びました。徐々に日常生活も正常化していますが、経済活動の再起動にはまだ活気が不十分であります。経済界からは4月の単月財務情報の公開で売上高の後退が業界によっては70から90%に達していることがパンデミックによるロックダウンの急ブレーキの影響を物語っています。和食ブームで高成長の食材関連ビジネスはレストランの閉店で4月は大幅に売上が下がりました。多くの日系企業は自動車業界とは直接又は間接的に商取引で依存しています。4月の新車販売がEU全域で76%も後退し、生産の中止などで日系企業のビジネスも大幅に下がっています。4月末の失業率は先月の5.1%から5.8%に上昇しましたが、時短操業対象の従業員の数が1000万人を超えた統計の方が注目されています。リーマンショック時の時短操業の対象の従業員は330万人程度でした。ドイツ経済大臣は2020年のGDPは6.3%縮小し、2022年にパンデミック前のGDP成長まで回復すると予想しています。日常生活がマスク着用と人と人の距離を確保しながら正常化しても経済界の回復は一年以上かかりそうでドイツで活動している日系企業も厳しい環境に対応しなければなりません。

フランカス公認会計士・税理士・弁護士事務所はドイツの日系企業のクライアントに継続的に重要な給与計算、月次会計サービス、3月決算の監査の業務を提供しています。幸い、弊社従業員ではコロナウイルス感染者は今のところ出ていなく、事務所も開けています。大半のスタッフは在宅勤務を選択していますが必要に応じて事務所にも出向き来ます。今のところはビデオ会議でミーティングは直接会わなくても実施できています。今まで紙ベースであったプロセスもペーパーレスに切り替えて対応しています。

 

上記コラムを寄稿した専門家に直接相談
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