現地法人と支店とを比較しますと、以下のような相違点があります。
設立時及び設立後におけるシンガポールでの手続を考えますと、現地法人の方が支店よりも各手続が容易であるため、現地法人での進出が望ましいと考えられます。
一方で設立当初は損失の発生が見込まれる場合、税務上の観点からは日本本店の利益と支店の損失が相殺できるため、当初は支店形態で進出し利益を生む体質になってから現地法人へ移行するという方法も考えられます。
また、損失が継続的に発生する場合には現地法人の資金を増資、または日本親会社からの貸付で補てんすることが考えられますが、増資・貸付には親会社における機関決定を必要とするため決裁手続が煩雑であり、さらに会計上においても親会社で減損の検討・処理が必要であることから、日本親会社側の手続上の観点からも支店形態で進出することが好まれる傾向があります。
但し、支店から現地法人への移行は、各種契約、ビザ、銀行口座の切替えなど手間がかかること、事業譲渡に伴い日本の税務上においてのれんの評価及びキャピタルゲイン課税の問題が生ずること、スタートアップ時期に発生した税務上の欠損金は永久に繰り越すことができること、並びに現地法人での進出によりシンガポールにおける事業拡大を早期に対外的にコミットできることなどを考えますと、数年後に利益が発生する見込みであれば最初から現地法人形態で進出することが望ましいと考えられます。